−粉(こな)

 おもしろい本にぶつかった。
 今回が125冊目にあたるシリーズ物、「ものと人間の文化史」(法政大学出版局)の「粉」(こな、三輪茂雄著)である。1968年に出版された「船」(須藤利一編)にはじまり、中断をはさみながらも37年続いているから驚く。
 テーマは実に多彩である。人間のつくり上げた具体的な「かたち」である個々の「もの」について、その根源から歴史を捉え直すことに力を注いでいるから、面白いだけでなく知的刺激に満ちている。それでいて小難しく無いのは有り難い。

 「粉(素材)を捏ねて形を整えて焼けばパンになる。陶磁器も、絵具も、金銀財宝も茶の湯も、その他すべての物が原点までたどれば、みな〝粉〟づくりから始まっている」と解く。そして、粉は再結集され思いがけない性質を持つ新たな物になる。

 古代人の生活において画期的発明は縄文土器だが、これも粉である粘土からつくられた。1万2千年も前の縄文土器佐世保で発見された。世界の名だたる遺跡より何千年も古いと言う。しかもつくり方がすばらしいらしい。
 それまでの道具は、素材を割ったり削ったり(減量型)してつくりだすが、土器は粘土をしだいに積み上げる(カサ上げ)増量型である。しかも失敗してもこね直せば出直せるが、石器などは修復が不可能だ。

 粉をつくる道具で「臼」に脚光をあてている。石引の蕎麦がうまい話には根拠がある。ハイテク素材をつくるにも臼が活躍するそうだ。ほかにも、黄粉、抹茶、ナノテクノロジーと話は尽きない。

 次は、No17の「釣針」に挑戦しよう。