所謂学力低下について思ったことなど

おそらく周回遅れの話で、今更感アリアリなのだと思いますが、いろいろ考えてしまったので頭の中でグルグルしていることなどを書き連ねてみる。

■自分自身の事や印象など
どらねこは、昔から学習が嫌いで、家で宿題をちゃんとやったことなど数える程しかないくらいの、どうしようもないヤツだった。学校ではどうであったのかというと、授業では最初の5分くらいで飽きてしまい、所謂偉人さんの顔を加工する事で時間を潰して来たことばかりが思い出される。おまけに、体も弱い子であった上に、根性無しでも有ったため、学校を年中休んでいたような記憶まである有様で、ゆとりどころの騒ぎではない。
ゆとり教育世代と謂われる年代の方々と学校で接した事があるのだが、正直、自分よりもしっかり学業に向き合っているように見えた。タダ、ちょっと感じたことが有ると謂えば有る。
この分野に興味があるのなら、ソレは覚えておいて欲しような前提知識に欠けていて、その知識習得に対しても余り熱心ではなかったということだ。でも、昔はどーだったのか、どらねこには比較しようも無いのだが、ちょっと気になってはいたのですよ。

■学力の低下
世間一般(?)には若者の学力低下は既定の事実として扱われているように(どらねこには)見える。ソレはゆとり教育による学習時間の低下であったり、理系の大学生が初歩的な算数問題に満足に答えられないという形で語られることが多いように見える。そして、学力テストの経年変化が報告されると、マッス対象のメディアは「以前と比べて算数の平均点が○○点低下した!学力低下だ!!」みたいな論調で、大げさに騒ぎ立てるように(どらねこ)見える。その結果は本当に深刻な学力低下を表しているのだろうか・・・
学力低下には疑問点が多いのだが、高等教育の教員に存在する主観としての学力低下というものは存在するのだろうとは思う。

■当たり前の学力低下
高校生の成績分布に経年変化が無いとしても、少子化傾向は進んでいる状況においても大学入学者数が減らない場合には、大学生の学力レベルは低下するのは当然だ。4年制大学の入学者*1平成5年に49万程度であったものが、平成20年には60万を超えている
この見かけの学力低下と、ゆとりの世代というレッテルによる確証バイアスが実態以上に大学生の学力低下を演出しているのではなかろうか。

■学生の目的は○○大学を卒業すること
日本は学歴社会と謂われるけれども、どらねこにはちょっと違和感。だって、学歴社会だったらポスドク問題など起こりそうも無いのに(単純思考勘弁してね)。その割に高偏差値の国公立大学や有名私立大学の学部卒業生を企業は優遇して採用しているようにみえる。しかも、あまり学部は問わない採用だ。日本の企業は高度な専門知識を修めた人材よりも、高偏差値の大学卒業者を求めているようだ。
そんなの学生だってわかるだろうから、大学で専門知識を磨くのに一生懸命にならなくても不思議は無いんじゃないの?で、専門知識を欲しないから、必要となる前提知識習得に熱心になれない・・・のかなぁ。

■先生は大変だから愚痴だって言いたくなる?
少子化で大学は学生を集めるのに大変みたいで、受験生を集めるためか、試験科目を減らしたり、AO受験を行う学校が増えてきたそうな。その結果、学ぶ分野で求められる知識を問われないまま大学へ入学するケースが増えてくるというのは現実にあるだろう。
大学はなんで、そこまでして学生を集めるのかと謂えば、受験生が集まらなければ経営に差し支えがあるからだ。でも、そうやって頑張って学生を集めたらそれで終わりとはならないのが大変なところで、次は無事に卒業させなければならない。入るのは簡単だけど卒業できない学校は日本的採用システムに於いては選ばれない可能性が高そうだからだ。じゃあ、テキトーに単位認定して卒業させれば良いというモノでもないので、教員はホントにもう、懇切丁寧に基礎からみっちり教えてあげる。学生だって卒業できないのはイヤだから苦手な科目もなんとかついていく。
大学教員がこの状況で「近頃の学生は・・・」と、いったとしても不思議ではないと思う。

■企業が変わらないとムリなんじゃない?
企業の選抜が卒業研究内容を見たり、専門知識重視にならない限り傾向は変わりそうもない気がする。大学で何を学んだのか?どのような専門知識を習得したのか?を見るようになれば、学生は大学で知識習得に必然的に勤しむんじゃないだろうか。その知識を習得するために必要な基礎知識を目の色変えて学ぶかもよ。

■子どもの学力はホントに低下してるの?
学力を評価するための方法として、テストがあるけど、テストにも様々なテストがあって、目的に応じて使い分けられているみたいだ。コレだけは覚えておいて貰いたい、基礎的学力を確認するための学力調査もあるし応用力を測る調査もあるだろう。また、自国の学力は世界的に見てどの辺りに位置するのかを確認する調査もあるし、学力の経年変化を見るための調査もあるだろう。
そして、実施された調査結果もそのままでは考察できないので、様々な統計処理などを駆使した解析が行われると思うが、その方法も様々だ。だから、何処を切り取ったのかによって正反対の見解が導き出されることもあるようだ。
これはちょっと暴論の類だと思うが、学力は下がっていると予断を以て記事を書こうとする記者がいたとすれば、その予断を支持する解析を紹介して、『学力は低下していると専門家は分析した』と記事を結ぶかも知れない。

■国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)
日本人の理数系離れ、学力低下が深刻化している。そのようにマッス対象メディアで語られる事があるが、云われるほどに日本人の理数系学力は低下しているのだろうか。世界から置いとけ堀状態なのだろうか。
その根拠として、TIMSSが引用される事がある。『1995年と比べ、2003年の結果は統計的に有意な学力低下が認められた』若しくは、『調査開始年に比べて各科目の国際順位が低下している』とされ、『学力低下が浮き彫りとなった』と報道されたようだ。
どらねこ(厭くまで一個人の意見)がこの調査を読んだ限りでは学力低下と断定できるような結果は読み取れなかった。それはどらねこが学力低下自体を疑わしく思っていることも理由の一つかも知れない。その事は報告書↓でも、述べられている。
国際数学・理科教育動向調査の2003年調査(TIMSS2003)

■TIMSS2007の結果
ところで、2003年の結果を基に、学力低下を嘆いた新聞やテレビ媒体であったが、現在は2007年の結果概要が既に報告されている。
TIMSS国際調査結果概要
2003年の時は引き合いに出されることが多かったように記憶しているが、なぜか、2007年の結果をあまり耳にしない。気のせいなのかも知れないが・・・
学力低下の証拠として挙げられた点数の低下傾向は2007年の結果からは読み取れない、というよりむしろ上昇傾向である。

これが学力回復の証拠とは勿論謂えないが、学力低下の存在も??と、どらねこは思うのだ。国際順位も、小学4年生算数で4位、理科で4位、中学2年生数学で5位、理科で3位となかなかだ。
中学2年生の彼らはそれ以前に所謂ゆとり教育を受けてきたわけであり、ゆとり教育により学力低下が生じていたという言説自体が怪しくないだろうか。
『ゆとりの世代』というレッテルが根拠無く彼らの自信を失わせたとすれば、その社会的損失はどれほどのものだろう。ちゃんと出来ているのに、自信がないという子が多い日本社会って、どうなのでしょう?自分より頑張っている人々に対してゆとりなんて名付けられて、自信も失っているんだとしたら、どらねこは恥ずかしくて生きていけなくなっちゃうよ?
みんなもっと自信をもってイイと思うんだ。

*1:文部科学統計要覧より