Huluに小さな向かい風?

昨年3月に本サービスを開始して以降、Huluはウナギ登りに利用者数を増やし、配信パートナーやコンテンツ提供パートナー、広告主を次々に獲得し、そしてまだ実現はしていませんが国際展開に向けた準備を進めるなど、極めて順調にビジネスを展開してきました。でも、そんなHuluの強気の拡大路線にいくらか水を差すことになるかもしれないような動きが現れ始めました。

最近、HuluのコンテンツがTV.comとBoxeeで利用できなくなったという話題が相次いで報じられました(Paid Contentの記事12)。TV.comというのはCBS傘下のサイトです*1。もともとはテレビ番組のエピソードや出演者、放送日などについての情報を提供するウェブ上のテレビガイド的なサイトでしたが、2か月ほど前からは動画の配信も始めています。当初はHuluのコンテンツもTV.comで視聴できたのですが、その提携が打ち切られました。Huluにとって、TV.comは動画配信のパートナーから配信プラットフォームとしての競争相手に変わりました。

また、最近注目を集め始めているBoxeeは、AppleAmazonNetflixなどさまざまな企業が提供する各種の動画や映像をまとめて視聴できるようにするソフトウェアを無償で提供する会社です。これまで、BoxeeはHuluと正式なパートナーシップを結んでいた訳ではありませんが、HuluのコンテンツはBoxeeを介して視聴できるようになっていました。でも、映画スタジオなどHuluに動画を提供しているコンテンツ・オーナーがBoxeeからのアクセスを遮断するようHuluに要求し、Huluはそれを受け入れました。Huluの公式ブログにある、CEOのJason Kilarによるコメントを紹介します。

我々は、コンテンツ・プロバイダーたちからBoxeeの製品を介したHuluのコンテンツへのアクセスを遮断するようにという要請を受け、彼らの望みを尊重することにした。我々は、メディアの融合(media convergence)という猛々しい新世界が持つ可能性を信じているが、同時に、ユーザーのメディア体験を向上させるというHuluの野心的で終わることのない使命を成し遂げるための最良の方法はコンテンツの所有者たちと手を携えて歩むことだという堅い信念も持っている。彼らのコンテンツがなければ、Huluのサイトや配信パートナーのサイトを通じてあなた方にコンテンツを提供することもできなくなるのだから。

ネットのテクノロジーが持つ、「いろんなものをオープンにしてつないでいく」性質と、権利ビジネスとしてのメディア産業が持つ伝統的な「囲い込み」戦略の間で微妙なバランスを取らなければならないHuluの立場が良く表れたコメントです。

このような動きは、Huluの勢いをたちどころに止めてしまうようなものではありません。でも、これらの事例は、YoutubeP2Pによるファイル交換などに対してオールド・メディアであるNBCやFOXが送り出してきた対抗馬として成長してきたHuluが、「攻め」だけでなく「守り」も意識しなければいけない時期に差し掛かってきたことを示しているように思えます。

*1:CBSがCNETを買収した時に一緒に買われました。