一日一冊『陽気なギャングが地球を回す』伊坂幸太郎

陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)

陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)

今日の一冊は『陽気なギャングが地球を回す伊坂幸太郎。読んだきっかけや、理由はいくつかあるんだけど、一番はじめが2008年4月17日の新聞で、本屋大賞を受賞したことが載っていたこと。これがきっかけでこの人の名前を覚えた。それから、なんでも良いから読んでみようと思っていたのが一つ。それとはまったく別にこの人の本を四冊ほど読んでいた友人が「今のところハズレなしだよ」なんてことを言ってたのも一つ。偶然、本屋でこの本の表紙がおれを見ていたことや、一章よりまえに書かれている「なぜ銀行強盗が四人組なのか」という部分に引かれたのが一つ。とにかく、いろいろあって、この本を買い、読むことになった。

黄色い表紙に、炎のようなフォントで「陽気なギャングが地球を回す」と書かれている。バックには地球と覆面の男が描かれている。どこかマヌケな雰囲気だ。

四人の銀行強盗が事件にまきこまれる(?)話だ。四人は、それぞれに能力があるが、意外とそこには目はいかない。

話の筋は「まあまあ、面白いかなあ」程度なのだけど、登場人物の会話や小ネタがいちいち面白い。たとえば、272ページ。成瀬がいつも大事なことを教えてくれないという話。

一緒にオーストラリアに旅行に行った時もそうだった。海岸で寝そべっていると、巨大なトカゲが十匹も並んで横切っていった。響野はそれに気づかなかった。成瀬だけが静かにそれを眺めて楽しんでいた。後になり、どうして教えてくれなかったのだ、トカゲの行列を見逃したではないか、と非難すると、「おまえも気づいていると思っていた」と悪びれもせず言い放つ。しまいには、「トカゲの行列なんて見たかったか?」とまで言う。見たいに決まっている!トカゲの行列なんだぞ。

「どうでもいい、思い出話だなあ」なんて思いながら読んでいたら、見たいに決まっている!とか言い出して吹きだした。すこし共感できるような気もするし、バカらしい気もする。

もう一つ例を挙げる。338ページ。響野が成瀬を心配性だと言う場面。

「あいつはさ、だいたいが先の先まで考えているんだよ。高校生のころからそうだよ。教師が最初の一言を発した時点で、結論まで頭に浮かべるタイプだったんだ。一を聞いて十を知るとはあいつのことだな。一を聞いて十を知って、それでもって一から十の間に素数がいくつあるとかそんなことまで先回りして考えるような奴だ」
「あなたは教師が一言喋ったら、それ以上喋らせないタイプね。一を聞いて十を喋るって感じ」

真面目な話には、変なちゃちゃがはいる。見ていて飽きない会話が印象的だった。

非常に読みやすく、面白い。おすすめできる。629円となっているが、700円でも良いと思う。800円でも考える。