沖縄・那覇空港で爆発・炎上した中華航空ボーイング737-800型機の主翼内燃料タンクに、ボルトが突き刺さってできた穴が開いており、そこから漏れた燃料がエンジンの熱で過熱し火災が発生したことが国交省事故調査委員会より発表されました。
燃料タンク内には主翼前縁スラットのアーム部分を収納するための出っ張り(トラックカン)があります。スラットは離着陸時の低速・高迎角下での失速を防ぐために用いられる主翼の可動部分で、通常飛行時は主翼に収納されていますが使用時には前方にせり出すようにスライドします。このスラットを支えるアーム部分のボルトが何らかの原因で外れており、着陸時にスラットが主翼に収容される際、アームに押し込まれるような形でボルトが押され燃料タンク内のアルミ合金製のトラックカン部分に突き刺さったものとみられます。
これまで同型機に対し製造元のボーイング社は米連邦航空局を通じ、パイロン(主翼とエンジンの接合部)から燃料漏れで火災が起きる可能性があるとして05年4月と06年3月に「耐空性改善命令(AD)」を出しています。ただし05年4月のADはパイロン内部の隔壁に隙間がないかどうかを点検を求める内容、06年3月のADは燃料配管から燃料が漏れた場合に外部に排出するための穴が詰まっていないかを目視点検することを求めたものであり、今回の事故との直接因果は薄いと思います。
耐空改善命令とは別に、ボーイング社からは今回の事故原因となったボルト部分の自主点検を航空各社に促す「技術情報」を05年12月に出していました。同社の機体で過去に2件、スラットからナットが外れるトラブルがあり、うち1件では燃料漏れを起こしていたのです。結果的に点検を指示する「耐空改善命令」ではなく促すだけの「技術情報」により指摘された部署が今回の燃料漏れの原因だった訳ですが、そもそもボルトがアームから脱落するには物理的にナットが同時か先に外れ落ちている筈です。またナットの脱落を危険視していたボ社にしてみると、ボルトまで脱落するというのは想定外のことだったかもしれません。
スラット周辺は6000飛行時間ごに目視で点検を行うことになっていますが、整備マニュアルでもボルト・ナットの緩み確認は求めていなかったということです。

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