One Star Story


今回、この3年越しアルティメット不定期通信でお伝えするのは、One Star Storyというミズーリ州出身のインディペンデントというか契約すら持っていなかったバンドの話です。メンバーは左からジェノ・ヴァローニ(Drums)、ヴァネッサ・ゲリー(Vocals, Guitars, Keys)、ブライアント・バビット(Bass)、ウィル・バスティン(Guitars)の4人。


非常にアットホームで危機感の全くない風変わりなバンドでした。曲調はJimmy Eat WorldParamoreに似たような所謂エモやパワーポップといったジャンルになるのでしょうか。僕の好きなバンドを挙げてみると、Paramore、Hey Monday、Automatic Loveletter、The Mascara Story、All Time Lowなどこのテの音楽ばっかりですが、僕がこういった音楽に目覚めたのが、何を隠そう誰も知らないこのバンドだったわけで。"Almost Over"という曲を聴いた瞬間、何かが脳内で弾けました。残念ながらこの曲がレコーディングされることはなかったんですが。そして僕が始めてちゃんと話をしたバンドでもあります。僕の訳の分からない質問にもしっかり答えてくれました。普段のほほんとしている4人組ですが、片手間に音楽やってるわけじゃないってのはすごい憧れましたね。

以下、僕がジェノさんに教えてもらったことをいくつか紹介。

"エモとは"
「エモってのは"エモーショナル"の略語で単純に言うと、歌詞または曲(両方に越したことはないけど)に感情移入できる類のものだよ。例えば、奥さんの浮気現場を目撃してしまったクリスが結成した"ダッシュボード・コンフェッショナル"なんかがそうだ。それからエモはパンクからの派生ジャンルと言われてるけど、もうエモってのはパンクに限られたものじゃないんだ。限定しないこと、それがエモのルーツなんだ。」

ティーンとエモの宗教的側面
「子供たちは成長過程で好きな音楽に出会うよね。彼らがこういった音楽を聴くのは、歌詞に本当のことが描かれているからだ。それから"クリスチャン・バンド"という言葉を嫌うクリスチャンのミュージシャンたちがエモの流行に多く見られるけど、エモという音楽を作ることで神との関係を感じてるんじゃないかな。」


ロディアスなロックと安いポップは紙一重
「難しい質問だな。僕らはポップな部分に頼っているところもあるからね。でもエモ・バンドがよく使う方法は、まずエッジの効いた曲を書いて、そこから歌詞とメロディで感情を引き出すってことかな。感情的な歌詞とポップ・アーティストのそれは、実はそんなに変わらないんだけど、違う立場、もっと情熱的な視点で描かれた物なんじゃないかな。歌う事例に新たな視点を足すことでもっとパーソナルにするのがエモだと思う。それがリスナーを惹きつけるんだ。」


事の起こりは同じ大学に通っていたジェノさんとウィルが出会ったこと。似たような音楽が好きだったことで意気投合。数年後、IT関係の仕事をするジェノと写真家のウィルが見つけてきたやたらベースのうまいお調子者ブライアント、大学休学中の気合の入りまくった盛り髪18歳ヴァネッサの4人で結成。EP1枚、シングル数枚を実費で発売し、2007年にはオーナーストーン・フェスティバルに出場。そして、2008年にはインディ・レーベル"トランタジック・レコーズ"と契約が決定し"The Empty Room EP"を発売、セカンド・ギターにザック・ピアソンという新メンバーも加入します。
しかし2008年1月、ブライアントが脱退します。ベーシスト不在のなか、彼の後を追うようにソロ・キャリアを追及するためヴァネッサも脱退、それに伴いバンドは空中分解してしまいます。ひとつの時代が終わったような気がしました。


しかし、昨年MYSPACEのアイコンが見覚えの無い写真に変わっているのを発見しました。ジェノさんの結成した新たなバンドでした。Storylineというそのバンドにウィルとヴァネッサの姿はありませんでしたが、その中には何故かブライアントが。メンバーはジェノ(Drums)、ブライアント(Guitars)、ザック(Guitars)、アシュリー・モーガン(Vocals)、マイク・デュヴァル(Bass)の5人。ヴァネッサに比べ、アシュリーは音域が広く、歌唱力が非常に高くて、レベルが格段に上がっています。また個性的な顔立ちのヴァネッサと比較してアシュリーは万人受けしそうなアイドル顔をしています。何より最近発売された"Welcome Home EP"にはシングル"Give Chase"のほか、"Almost Over"をはじめてレコーディングして収録しています。走り気味だったドラムも落ち着いています。続いて発売されるアルバム"Storyline"にも期待が高まるばかりです。


でも!それでも!何かが足りない気がする。物足りない。そう、あのヴァネッサのねちっこい歌い方が、あんまり大きくない歌声がない。現在、彼女はヴァネッサ・ローズと名を変えて、ソロとして活動しています。大きかった金髪は茶髪に纏められ、こじんまりとしています。バンド時代と打って変わって、インディ色が非常に濃くなっています。そんな彼女の曲にはなんと、"Almost Over"のインディ・バージョンが。あれだけ大暴れしていた女がいまはあんな大人しい女性、一抹の寂しさを感じずにはいられません。
それからウィルは写真家として活躍している模様。なかなかキレイなものです。

それぞれの道を歩み始めた4人ですが、いつかオリジナル・メンバーで一晩限定とかやってくれるとうれしいですね。

One Star Story - purevolume
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Vanessa Rose - Myspace
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