野上裕之個展"NU"@TEMPORARY SPACE

昨日2007年1月9日火曜日午後2時、東京からひょっこりやってきた平岡拓夫さん(情報プランナー)をやや強引に誘いTEMPORARY SPACEへ直行した。昨年末にグラヌールの夕べで初めてお会いして意気投合した店主中森敏夫さんに会い、開催中の野上裕之個展を見るためだった。「札幌で最もディープな場所のひとつへ案内するから」と平岡さんには言ってあった。

札幌市北区北16条西5丁目の通称「斜め通り」に、やっと冬らしくなった景観の中にひっそりと佇むようにその清楚で素敵なギャラリーはあった。"(mo)NU(ment)"と題された野上裕之展は素晴らしかった。尾道在住の野上さんは当地で携わる古民家再生の仕事で不要になった廃材を担いでフェリーに乗って北海道にやってきたのだった。そしてTEMPORARY SPACEで今回の作品を一から製作し完成に漕ぎ着けた。(その興味深い経緯等は中森さんのブログ『テンポラリー通信』で。)

そこには野上さんの人生、旅、移動の記録と土地の記憶が重なり合う中から、生まれたての「物語」、あるいはその「序章」のような魂の新鮮な息吹が形象化されていた。私は何度も思わず作品に手を伸ばしては触れそうになった。言葉よりも前に体の奥が反応して手が伸びたのだと思う。

これは全三点のうちの一点。他の二点も素晴らしい。
突然の訪問を快く迎えてくださった中森敏夫さんとは奥の間、中森さんの深い愛情に包まれた膨大な記録が有機的にレイアウトされた不思議に心地よい、(「アふンルパルのようだ」とどこかで感じていた)で色々と話し込んだ。平岡拓夫さんも初対面の中森さんといきなり本質的な話を始めたりして、超面白かった。その内、個展の主、新進気鋭の彫刻家である野上裕之さんもやってきて、話の輪に入った。さらに今回の野上裕之個展にも深く関わっているミュージシャンでもある篆刻酒井博史さんもやってきて、「山神」や室蘭市の再開発などについて話すことが出来た。午後7時の閉店を待って、近所の居酒屋に場所をかえ、談話は夜半にまで及んだ。ほんとに楽しかった。

雪降るなか、居酒屋に向かう中森、平岡、野上の三氏の後ろ姿。

居酒屋を出たら、吹雪だった。

軍艦岬、駒岡清掃・粉砕工場



数日前から藻岩山の裾野が気になりだす。

気温が下がり、雪が積もり、やっと冬らしくなって、体の調子も本来を回復しつつある。

不図南方を振り返ったら、家並みの隙間から遠方に白煙をあげる赤と白のストライプの煙突が目に入った。びっくりした。駒岡清掃・粉砕工場だった。北石狩衛生センターと白老の日本製紙工場を連想する。

屋内の熱が屋根に伝わり、積もった雪が少しずつずり落ちる。ツララが壁面や窓に突き刺さらんばかり。

復路、歩道の様子。車道からも歩道からも寄せられた雪がすでに高さ1メートルを超えている。

朝の散歩の前、早朝所用で出かけた帰り、車窓から藻岩山の東側裾野、通称「軍艦岬」を撮る。昨日、TEMPORARY SPACEで中森敏夫さんや酒井博史さんとも話題になった札幌の南のランド&マインドマークのひとつである。近くの石山通沿いには、オレンジ色の看板の居酒屋「軍艦岬」があるよ、と高校生の娘が教えてくれた。

アポリネールと雨:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、九日目。


Day 9: Jonas Mekas

Tuesday Jan. 9, 2007 6 min. 32 sec.

With Jean-Jacques
Lebel, toasting
Guillaume Apollinaire
and Futurists
at 202 Blvd. Saint-
Germain, Paris, the
house Apollinaire
lived in.

フルクサス(Fluxus)の動向に共にその名を刻む畏友ジャン・ジャック・レベルと、アポリネールが住んでいた巴里、サンジェルマンの202大通りの家で。レベルはアポリネール未来派に対する深い共感を元気に語る。


***

ジョナス・メカスによる365日映画、十日目。


Day 10: Jonas Mekas
Wednesday Jan.10th, 2007 4 min. 42 sec.

rain rain rain
let the rain
fall on
my thoughts
on my
soul

雨 雨 雨
雨を
思いの上に
魂の上に
降らせ給え

ニューヨーク、ブルックリンの自宅アパートにて。固定カメラは窓越しにとなりのアパートを捉え続ける。雨音と雷鳴が聞こえる。独りで何かを飲むメカス。言葉はない。窓外を眺めるメカスの斜め後ろ姿。雨音と雷鳴が言葉以上にメカスの心を雄弁に物語る。

TEMPORARY SPACEにて、3本

前々々エントリーで書いた中森敏夫さんのTEMPORARY SPACE訪問では私が持参したデジタル・ビデオ・カメラがすこしだけ活躍した。そのとき撮影したフッテージから試みに3本を切り出した。

(1)"NU" 野上裕之個展の三作品を、無理を言って野上さんご本人に撮影していただいた。「映像はむずかしいなあ」と言いながらも、さすがにセンスのいい絵を撮ってくれた。それを私がざっくりと編集した。YouTubeの制限でいつもビデオの解像度の低さ、荒さが目立ってしまって残念だが、なんとか空気は伝わると思う。

Hiroyuki Nogami(camera), Masao Mikami(edit.)


(2)中森敏夫さんのブログ『テンポラリー通信』によれば、年末年始には野上さんの彫刻と酒井博史さんの篆刻の「ライブ」が行われたらしい。その篆刻作品はTEMPORARY SPACEのギャラリーの出窓に並んでいた。味わい深い篆刻たちを撮影した。

Masao Mikami(c. & ed.)

(3)私が酒井博史さんと話し込み、中森さんが平岡さんに、80年代から続く中森さんの札幌を普遍的な文化的拠点として立ち上げるための闘いについて解説していたところを、野上さんがビデオ撮影していた。私だけが写されていたことに気づいていない。他の三氏は気づいていたようだ。酒井さんは髭と帽子が決まっている。平岡さんは資料に眼を落としながら、中森さんの説明を聞いている。中森さんはいつもとてもダンディである。野上さんの目線はとてもよい。編集はしていない。

Hiroyuki Nogami(c.)