『風が強く吹いている』


見てきた。三浦しをんの傑作を映画化した『風が強く吹いている』
初日だぜ! 前売り券買ってたんだぜ! 

カケルとハイジが長い道を無駄のないフォームで走っていくのが俯瞰になって、脇には桜がバーっと咲いていて、タイトルロールが出る・・・ってところで、既にじわっと目から汁を出してたのは私くらいなもんだろうか? 

その後も、途中でも何度か涙が出た。やっぱり、特に走るシーン。予選会でカケルの姿が現れたときとかね。人が一生懸命に走る姿って、本当に不思議と泣けるものがある。そういうのを、うまく描いてたと思う。

とにかく原作小説を何度も何度も舐めるように読んでるので、映画を見てるあいだも私の脳裏には常に原作という重低音が流れており、10人の部員たちの見分けもソッコーでつくのはいいんだが、「このせりふ、原作のままだな」とか「このエピソードはオリジナル」「おっ、そういう設定でくるか。うまいね〜」とか、Twitterできる環境ならいったいいくつのつぶやきをpostしたかわかんないくらいだ。

で、あの長い物語を2時間ちょっとの映画作品に良く仕上げてあると思う。なんといっても、原作をとても大事に扱ってくれてるように思って、すごくうれしかった。省略されたエピソードや映画オリジナルの設定などいろいろあるんだけど、原作のイメージを壊すことはなくて、「なるほど、短くして、キャラ立ちさせて、なおかつ説得力もあるし」て感じのものがほとんどだった。脚本・監督の大森寿美男、あんたはやっぱり漢(おとこ)だよ! 

ただ、まっさらな状態で映画を見た人はどう思ったのかなーというのがすごく気になる。や、じゅうぶん面白かったと思うけどね。いささか直球のストーリーがサクサク進みすぎて、置いてけぼりにされる感はあるかもしれない。あの直球さに違和感をもたせないために、原作ではじゅうぶんな文量をかけてるからねー。あと、途中で何度か、「1980年くらいの大映ドラマ?!」みたいな(や、私もよく知らんけど、雰囲気で)、ものすごく古くさい演出があったんだけど、あれはわざとか? 大森の好みなのか?! 

違和感があったのは、ラスト近くでハイジをあそこまでぼろぼろにしたこと。あれじゃあいくらなんでもゴールできないよ〜。映像だから、わかりやすくしたのはわかるんだけどさー。そして、最後の最後のきめぜりふの絵も、私の脳内イメージ(つまり小説で描写されていたもの)とだいぶ違った。あの絵が見たかったーーー!

それでもこの映画をひたすら気持ちのよいものにしてるのは、とにかくハイジ役の小出恵介とカケル役の林遣都の演技によるところが大きい! 映画化を知ってキャストを見たときは、どちらも「え・・・・?」と首をかしげてしまったんだが、鑑賞後は、もはや、あの2人以外は考えられない、ってくらい。

ハイジ、かっこよすぎた〜〜〜! ハイジって、おまえはマンガの登場人物かよ!てぐらいに爽やかな風情で歯の浮くようなせりふを言い続けるキャラなんだけど、小出恵介、まったく違和感がないの。おまえはほんとに現代の若者か!? そしてとにかくセクシー! 若い俳優にあんなにセクシーさを感じたことってあるだろうか。ほんと、また受精してしまいそうになるくらい色っぽかった。

で、彼が、せりふを喋ったあとなんかに、ちょっとだけ口元を歪めるような表情で演技するのを見て、「うわっ、誰かに似てる! こういう演技する人、見たことある!」てずーーーっと考えてたんだけど、いっちばん最後のバーベキューのシーンでわかった。木村拓哉だ!!! これほんと、隠れた見どころです。絶対似てるから。

最後に、わざわざピックアップするにはあまりにもくだらなくて削られたんだろうけど、原作で私がすっごく好きだったエピソードを書きます。
みんなで記録会に行くためみんなをワゴンに乗せたハイジは実はペーパードライバーで、最初、めちゃくちゃに運転が下手クソで車内が騒然となるんだよね。

「運転が下手な男って、あっちも下手だって言わねえか?」
ニコちゃんの爆弾発言に、ジョージとジョータが「俗説でしょ?」「いや、一理あると思う」と勝手なことをしゃべりだす。「あっちって、どっちですか?」とムサ(エミ註:彼は留学生)が神童にまた尋ねる。

ちなみに、ハイジは運転に夢中で聞いちゃいない。で、それから作中ではいろいろなことが起こりつつ、しかしせいぜい1、2ヶ月しか経たないうちに、彼らはまた同じワゴンで夏の合宿に行くんだけど、そのときにはハイジの運転は見違えるように上手くなっている。カケルがそのことを指摘すると、

「俺は、なにごとに関しても習得が速いんだ」
ハイジは淡々と言った。「凝り性だから、研究と練習を熱心にしてしまう」
カケルは例の俗説を思い出し、「えー、じゃあ、あっちのほうも、、、」ともやもやしたが、
「そうですか。そうですね」
と、うなずいておいた。

原作をパソコンの脇に置いて書き写しながら、わたしってどんだけバカなんだ・・・と情けなくなってきました。三浦しをん腐女子を殺す文句を知り尽くしすぎ!!!

いちお、原作を読んだときの感想もリンクしておきます。いま読み返すと、これもロクなこと書いてないな。
風が強く吹いている - moonshine

ヨッパライとホルモンに翻弄される

ゆうべは夫が泥酔して帰ってきて大変だった。彼は酒が強いし、基本的に陽気なヨッパライなのだが、酒量が過ぎるとでくの坊になる。まあ、年に2,3回くらいかなあ。このくらい酔っぱらって帰ってくるときがある。こんなになるまで、いったいどれだけ飲んでるんだろうと思うのだが。

彼は本質的に攻撃性をもたない男なので、暴言を吐くとかバイオレンス男になるとかいうことはないんだが、とにかくお話にならない。いったんリビングに鞄を置きにきたものの、顔が死んでて一言もしゃべらず、ワイシャツとズボンを脱ぎ散らかしてシャツとパンツという格好で、膝から下はベッドからはみでた形で転がって寝ている。

「歯くらい磨いたら?」「パジャマを着ないと風邪ひくよ」と声をかけてもまったく動かず・・・。それでいて、強引に私の毛布の中に入ってこようとする。自分のをかけてあげようとすると、なぜか激しく抵抗して足をじたばたさせる。痛いっつーの!

ほんっと、酔っぱらった人間って迷惑だよなあ。と、かつて自分も酒による醜態を何百回も(そんなに?)繰り返してきたことを思えば一概に責めることもできないのだが、完全に正体をなくしている今、寝返りを打った弾みなんかで腹に男の膝が入ったりしたら、、、なんて想像して怖くなったので(冷静に考えて気にしすぎなんだがね)、リビングのホットカーペットに毛布を持ち込んで寝ることに。

彼自身になんの悪意があるわけでもないんだけど、なんだかものすごく悲しくなって泣く。そりゃあ私、単に妊娠がわかっただけで、そんなの世の中では珍しくもなんともない、むしろ喜ばしいことだし、今の段階でひどく具合が悪いとかってこともない。でも、妊娠初期の流産率の高さに怯えてる部分もあるし、つわりがすんごくきつかったらどうしようとか、自分の体はどうなっちゃうんだ?!みたいな不安はやっぱりあるわけで。

夫にはそういう気持ちも話してるけど、やっぱり実感があるわけではないんだろうなー、私が飲めなくなったのに、平気でこんなに飲んで帰ってきてさ。自分の体のことじゃないんだもん、あたりまえだけどさ。ていうか、酒がすすむということに理屈なんてなくて、単にその場のノリとか雰囲気とか自分の体調とかだってことは、私もよくよく知ってるんだけど。でも、それにしてもひどくない?! 思いやりがなくない?! あーでも、こんなことでいちいち泣いてても始まらない。おなかの中で育てて、生んで、子どもを大きくしなくちゃいけないのに。とか、なんとか、泣いてるときはそういう気持ち。

妊娠するとホルモンの分泌が大激変して情緒不安定になるとかって書いてあるのはほんとだね! 絶対泣くほどのことじゃないのになー。実は、この数時間前にひとりで本を読みながらも、不意に号泣しちゃったんだよなあ。それは作中で紹介された原爆詩のいくつかを読んだときで、確かに本当にむごい、悲しい詩だったんだけど・・・ほんと、堰を切ったように泣いたからね。

リビングに朝の日差しが入ってきてたから7時過ぎくらいか、夫が泡食って「ごめん! すいません! 申し訳ありません!」と呼びにきたのでベッドに戻って、ひどく疲れを感じながら2度寝。起きたあとは、当然、「おなか蹴られるかと思った」「別人みたいで怖かったんだもん」「悲しくてしくしく泣きながら寝たんだよ」と、ぶちぶち文句言いました。

夫、ひたすら反省してた。あれだけ酔っぱらってたら当然ながら、彼は二日酔いに苦しんでおり、経験上、私も身に沁みてわかるのだが、ひどい二日酔いって、人を奈落の底まで突き落として反省させる力をもっている。「もうあんなに飲むのはやめます」と殊勝に言ってたが、まあ喉元過ぎれば楽しきアルコールの世界に返り咲くのが酒飲みというもの。わかってはいるけど、これからさらに張り切って家事をやってくれるそうなので、許します。