NYタイムズのデリダ死亡記事の余波

entomolite2004-10-15

先日、最後のあたりをちょっと訳してみたNYタイムズのデリダ死亡記事に対して、デリダアメリカでの勤め先であるUC-Irvineを中心に抗議声明が出ていた。
http://www.humanities.uci.edu/remembering_jd/
Judith Butlerが個別に抗議文を発表しているほか、ジジェク、G.C.Spivak, J.Hillis Miller, Geoffrey Hartman, Hayden White, Shoshana Felman, Barbabara Johnson, Drucilla Cornell, Jonathan Cullerなどの、脱構築に程度の差はあれ連なる著名な研究者がこの声明に署名している。
声明文によると、Jonathan Kandellという人物が書いたこの記事は「下種根性に満ち、生半可な知識に基づいた」ものであり、このような記事を正式な死亡記事としたことでNYタイムズは「読者に不正義を働いた」とのこと。


私見では、NYタイムズの記事は、ところどころ皮肉と誤解を感じるところがあるけれども、例えば他のイギリスでの死亡記事に比べてとりたててひどいものとは思えない。
あえていえばNYタイムズの記事はde Manのスキャンダルに二度にわたって触れているのが難か。
しかし記事の最後のあたりでは、デリダの難解さを擁護するようなある記者のコメントも引用している。
「しかしデリダのとっさのコメントでさえ大変興味深いものでした。というのも、すべてのことが真剣に考え抜かれていたからです。そして彼は注意深いときには、難解さのために難解であるということは全くなく、彼の哲学的な立ち位置がそのようにしているからなのです。」
だから、なんでアメリカのアカデミアがこんなにも過剰に反応しているのかのほうが気になる。


参考