伊達の迎賓館 【2010.05.05】

伊達の開拓記念館へ向かう途中で人の出入のある建物と出会う。
迎賓館だそうだ。築118年だったろうか、そう聞き覚えている。

移築されることなく当時のままここにあるという。皆が持ち寄り
誰だったか?お迎えするにあたり建築された言われある建物と聞く。
どちらかと言えば質素。ただ無駄なく洗練された綺麗な建築だ。

   

釘隠しは幾つかのパターンがあった。この日は富良野出身の方が
ボランティアで案内されていた。適当に好き勝手質問する私を
邪魔にすることなくむしろ丁寧に終始案内して下さった。ちょっと
などと思い立ち寄ったのがその後のスケージュールを苦しくしたの
だけれど十分に楽しいひと時を送ることができました。感謝します。


ちなみに釘隠しはなくなることも多いらしい。目が行き届かないと。

案内の方に聞き、眺める。障子の組子。面が取られ丸みを帯びる。
そう、迎賓の間は真っ当な和の空間となっている。中でも目を楽し
ませてくれるのが建具だ。

   

華麗な組子。L字部分は止めの45度の加工となっている。

床の間に隣接する低い欄間の加工。この細かさ、昔は普通にあった
ようだけれど、これを現在図面に描き落としたら起こられそうだ。
誰がどれだけの費用で作るのか?施工者から直ぐに質疑が飛んでき
そうだ。これだけ細かいと半歩違えば、立つ座るの目線の違いで
目くるめくようにウツロイだすから不思議だ。

そして2間と縁を結ぶ欄間格子。この組子一体どうなっているのだ
ろうか?自分はフラッシュを使えないので、一切使わずに撮影する。
この下方からの明かりに映える様は、深い軒の外、庭や縁からの
照り返しで天空光が室内入り込みここを照らしている。何と深遠な
光を映していることか。それが縁の現しの垂木を奥に透かし見せ、
空間を分節している。ものが遮るのではなく曇天の空の元でも、
”光”で空間領域を視覚化してしまっている。

撮りモニターを眺めてびっくりしてしまった。なんて光景だろうか。
便利な機械などなかった当時、この組子は一枚一枚手作業で切り抜か
れて作られている。今も狂わずにその姿を見せるほどの高い精度。
ヒノキの柾目材を惜しげもなく使ったのだろうか?

オランダの近代美術館でファン・デル・レックのコンポジションなんて
具合に紹介されれば、そうかな・・・と思えるくらい抽象の光具合。
なんて丹精で華麗なんだろう。

ここまで綺麗に光を楽しめるものとは全く予想していなかった。
自分の勉強不足を反省する。それにしても綺麗、綺麗。
たーだ歓喜していました。私があんまりにもはしゃぐので、でも
ボランティアの方は最後まで色々な話をして下さいました。
ありがとうございます。



設計者である自分、やはり建築、とくに光には敏感なのだと実感する。
こんな優れた視覚化は現代の建築には見られない高度な仕組みがある。
曇天の空の明かり=天空光を深い軒の外から、照り返して欄間の10mm
前後の格子に下面に映えて見せるなど扱える人は皆無ではないだろうか。
しかもその光の映ろいが領域を示し区分し透かしている。


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建築ブログを描いています。
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