議決権の値段

突如として現われた村上氏のウェブサイト*1は、なぜかテキストでなくpdfへのリンク記事になっていて、読みにくいので是非ベタ書きにしてほしいと思うのだが、ともあれ相場操縦に関する説明は、まず簡潔かつ説得的だと感じたことに加えて、興味深い記述にも出会った。

また一部の報道機関では他人名義の複数口座を使う借名取引によって、空売りで大量の売買を行いながら、株価を不正に下げ、利益をあげたと報道されていますが、そのような事実は全くございません。事実といたしましては、関係会社(私が実質的に50%ないし100%保有しており、いずれも私が株式売買の発注権限を持っています)で当時400万株程度保有していたTSI株を、借名取引ではなく、当該関係会社で空売りを先行させて、最終的には、関係会社自身で保有していた現物株とトストネット取引にてそれを決済しただけのことです。実態としては、自ら保有している現物株を売却しているのと同様です。複数社の口座で空売りを行った理由は、現物を売却するのではなく、空売りを用いることによって実質保有株数を減少させたとしても、株主名簿上の議決権を維持し、引き続き企業価値向上のための影響をTSI経営陣に与えるためです。また各社それぞれの資金調達の問題等もありました。

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強調した一文で、要するに彼は株式リスクを減らしながら、議決権のみを残したいと考えたと言っているわけだ。こうして実行された取引スキームには、シンプルな現物売りと比べて、もちろんコストもリスクもあるわけだが、その差分こそが議決権の値段である。株式リスクと議決権は、分離し取引できてしまう。この古くて新しい問題は、いつだって僕をワクワクさせる。蛇足だが、村上氏の「各社それぞれの資金調達の問題等」も、ちょっとだけ気になる。