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羊男読書日記 このページをアンテナに追加

2017-12-30 アバ、アバ

[]アバ、アバ

アバ、アバ

ABBA,ABBA

アントニイ・バージェス

翻訳:大社淑子

サンリオSF文庫

【紹介文】

ABBA ABBA ? それには幾層もの意味がある。

まず、作者の名を回文風に並べたもの

また、十字架上のイエスが叫んだ「父よ、父よ」のアラム語訳。

さらペトラルカソネットの8行連の脚韻etc

だが、というか、ところでローマの一詩人が神の美について、イギリスの一詩人老いた雄猫についてソネットを書く。

互いの言葉はわからないが、世界中ソネットの背後に共通して一つの本源的な形式の輝きを認識することによって2人は触れ合う。

まるで猥雑なソネットを大量に書いたローマ方言詩人キーツとの喜劇的な触れ合いのように。

するとこれはプラトンへの回帰か?とんでもない。

真面目になどなっていられる場合ではないのだ。

全篇に氾濫する言葉遊び、駄じゃれ、仮装、身代り、聞き違え、性病感染といったドルーズ=ガタリ代理者の鎖列と交替を接合したバージェスという誰かが戯れに組み立てた猿たちの神、文学機械なのだ

感想

重々しい紹介文だし、笑ってしまうが、いたってストーリーは軽めである

でも深くて交差的な構成の内容なだけに、一回目で読めたかどうかと言われるとよくわからない。

それでもジョン・キーツローマ詩人ベッリとの出会いを描く様は英国イタリア言語空間交錯を端正に記憶させてくれる。

バージェスのキーツやシェリーといった詩人への思い入れは半端ではない。

改変歴史というガジェットを使わない分、より言語的な思推に満ちている。

前半はキーツが晩年暮らしていたローマ舞台に、詩人たちが繰り広げる言語遊びが楽しい

後半はベッリの詩が訳されているが、これはバージェスのイタリア人翻訳者だった夫人が訳しているらしい。

でも自分にとっては退屈で、ずいぶんと文学的素養がないと楽しめないのではないか。

しかし、ABBA ABBAという言葉はバージェスの墓石にも刻まれているらしく、この英国的な、あまりに英国的な作家の傑作にふさわしいタイトルだと思う。

2017-12-29 神秘昆虫館

[]「神秘昆虫館」

講談社国枝史郎伝奇文庫

【紹介文】

永世の蝶、永世の蝶!

雌雄二匹の蝶がいて、神秘伝説を持っているという……。

時代天保十一年の春、ふとした事件から蝶の存在を知った一式小一郎は、その蝶を求めて剣侠の旅に出た。

だが、彼の前に、同じ目的で立ちふさがる南部五郎

恋と欲望と、正義邪悪と、全編にみなぎるロマンの痛快さ!

はたして、永世の蝶に秘められた神秘は何?

そして、江戸四方十里内にある神秘昆虫館とは……?

【内容】

永世の蝶」と健気な娘をめぐって繰り広げられる恋の争奪戦

山界の異世界にあるという昆虫館に集うは浪人に、妖術使い、山人、異人、貴人とその盗賊たち。

どれもがキャラ立ちした登場人物ばかりで、国枝史郎先生お得意のエンターティメントである

物語破綻や謎解きのいい加減さなどはどうでもよく、大ボラ吹きをここまで通すことが奇跡なのである

神秘はどこにもなく、人々の妄想が作り出すものだとすれば、なによりも物語の展開そのものに腰の骨を折るような理知的な要素は枕だけで充分なのである

娯楽大作であるインディージョーンズ」と同様の結構を持っている国枝史郎小説歌舞伎のようなものであり、見えを切ってなんぼのモノなのである

しかしここまでお気楽ストーリーはいまの読者には受け入れられ難いのだろうか。

世知辛い世の中同様、イライラな空気を反映したばかりのような小説ばかり読んでいるのは辛い。

お父さんは時代小説(チャンバラ)が大好きなのは、そのためなのよ。

2017-12-24 聖ヴィーナスの夕べ

[]聖ヴィーナスの夕べ

The EVE of Saint VENUS

鈴木健三訳

アントニイ・バージェス選集・5

早川書房

【紹介文】

結婚式前夜の貴族の館。

ヴィーナス像を相手指輪交換の予行演習をしていた花婿は、石像の手がゆっくりと、猥雑な招きかけのように、閉じていくのを見てびっくり仰天した!

そしてその晩、彼のベッドに現れたのは・・・

英国伝統笑劇牧歌的ユーモア現代に甦らせる、異色の諷刺コメディ

感想

ストーリーからすると怪奇ものだが、まったく違って、コメディタッチではある。

しかしバタバタというわけではなく、あまりにも知的でいまの感覚からすると読みづらい。

ギリシャラテンへの強い憧憬が明らさまに展開されていて、それへの知識の幅も半端ではなく、よくわからないユーモアも多い。

わたし現実だ。すべての希望を捨てよ。ヌプルスウルトラ(不可越境)〉

これはダンテか?それともシェークスピア

シェークスピア時代のような西洋古典世界に囲まれた主人公たちの振る舞いも鷹揚である。

読んだことがないのでわからないが、「ヴィーナスとアドニース」を下敷きにしているのかもしれない。

そうした雰囲気なかに描かれる石像怪奇花嫁主人公の痴話喧嘩があまりに演劇なのは、大昔のイタリア映画を見ているようでもある。

未来過去に食い込んでいるのだ」という主人公言葉は、地中海趨勢時代への憧れと教養の堆積に満ちている。

2017-10-15

時間のかかる彫刻スタージョン 

時間のかかる彫刻スタージョン

最近よく翻訳されている昔のSF作家

読んだことのあるのは「人間以上」。

これは有名でよくしたSFであり、この作家人間性がよく現れていた作品だと思う。

人間以上」は人情的な小説であったという記憶がある。

その作家が書いたこの短編集はよくした現代小説であり、SF的な要素が少ない。

あくまスタージョンが描きたかったのは人間性であり、それを現出させるため にSFというガジェットを使ったに過ぎなかった、というのがこの短編集の感想で ある。

歳を重ねてから読むと、人生というものを考えさせられる作品だと思う。

2017-10-14 「大正野球娘」伊藤伸平

大正野球娘」伊藤伸平

大正野球娘」伊藤伸平

1,2巻を読む。

歴史的にあまり忠実でない面白さというべきか。

大正時代はすこしばかりスパイスの役目を果たしているが、

それがアダになっているのかもしれない。

史実に凝らないのであれば、もっとハメをはずした方がおもしろかったかも。

2017-08-14 時計じかけのオレンジ

[]時計じかけのオレンジ

時計じかけのオレンジ 完全版 (ハヤカワepi文庫 ハ 1-1) ペーパーバック – 2008/9/5

アントニイ・バージェス (著), 乾 信一郎 (翻訳)

内容(「BOOKデータベースより)

近未来の高度管理社会。15歳の少年アレックスは、平凡で機械的毎日うんざりしていた。そこで彼が見つけた唯一の気晴らしは超暴力。仲間とともに夜の街をさまよい、盗み、破壊暴行殺人をけたたましく笑いながら繰りかえす。だがやがて、国家の手が少年に迫る―スタンリー・キューブリック監督映画原作にして、英国二十世紀文学代表するベストクラシック。幻の最終章を付加した完全版。

感想

時計じかけのオレンジ』(A CLOCKWORK ORANGE)は、1962年発表のイギリス小説家アンソニー・バージェスによるディストピア小説、とWikipediaにはある。

なぜここまで暴力的なのか、そして世界とりわけアメリカに受け入れられたのか。

映画がヒットしたのには、当時のカウンターカルチャーがあるのかも知れない。

この時代ロンドンにはまだパンクは出現していない。

グラムロックか?演劇性には暴力は無縁ではない。

T.レックスボウイ暴力的ではないが、暴力性を誘発する。

おそらくそうしたサイケデリック迷宮が出てきた背景には世界大戦が横たわっている。

市民社会と背立する公的暴力、それはどこで成立したのか、アレックスらの主義主張のない暴力はその根源から来ているように思える。

果たして反戦小説というものでも、その影さえないが、暴力の根源はどこにあるのか、そしてそれさえも抑止しようとする公的抑圧とは何なのか。

YMOによって私たち公的抑圧、パブリックプレッシャーという言葉を教えられた。

羽良多平吉ジャケットではなぜ、YMOは赤いのか、それが公的抑圧という言葉とともに印象に残っている。

ここにも戦争の影はない。

しかし歪められた意思の影が、三人の赤いシルエットに揺らいでいる。

市民生活侵入してくる暴力とはこういった類いのものを示すのだと思う。

スロッピング・グリッスルやメルツバウ音響で指示しようとしたのは、こうした暴力のありどころだったような気がする。

さて、ゴタクはおいてゆき、いま読んでもこのスラブスラングみたいな変な言葉たちには脱帽する。

よくもこんな文章翻訳したなあとビックリすることしきりだ。

この文庫は完全版であるアメリカではカットされた最終章が入っている。

でもあまりに暗示的で、なにを指示しようとしているのか、全くわからない。

これはもっと書き込んで欲しかった。

エンディングとしては雰囲気的にもなんか悪くないのだが、もっとプロセスを示して終わりに持っていって欲しかった。

最終章に至るまでのアレックスの、長い生活写生がないと、このエンディング文句を言う人が多くても、それは仕方がない。

2017-08-13 アンソニー・バージェス

[]

邦訳小説

21世紀に入ってから、バージェスの小説翻訳されていない模様。

時計じかけのオレンジ』の一発屋に成り果てているとは・・・さびしい。

  • 1966 Tremor of Intent 邦訳『戦慄』

2017-08-03 THE PALE KING By David Foster Wallace

[]2011

THE PALE KING

By David Foster Wallace

548 pages. Little, Brown & Company. $27.99.

Maximized Revenue, Minimized Existence

Books of The Times

By MICHIKO KAKUTANI MARCH 31, 2011

‘The Pale King’ by David Foster Wallace - Book Review - The New York Times


By turns breathtakingly brilliant and stupefying dull ― funny, maddening and elegiac ― “The Pale Kingwill be minutely examined by longtime fans for the reflexive light it sheds on Wallace’s oeuvre and his life.

2017-08-02 OBLIVION By David Foster Wallace

[]2004

OBLIVION

By David Foster Wallace

329 pages. Little, Brown & Company. $25.95.

BOOKS OF THE TIMES; Life Distilled From Details, Infinite and Infinitesimal

By MICHIKO KAKUTANIJUNE 1, 2004

BOOKS OF THE TIMES; Life Distilled From Details, Infinite and Infinitesimal - The New York Times

Mr. Wallace's previous work shows that he possesses a heightened gift for what the musician Robert Plant once called the ''deep and meaningless.'' But in these pages it more often feels like the shallow and self-conscious.

2017-08-01 BRIEF INTERVIEWS WITH HIDEOUS MEN By David Foster Wallace

[]1999

BRIEF INTERVIEWS WITH HIDEOUS MEN

By David Foster Wallace

273 pages. Little, Brown & Company. $24.

BOOKS OF THE TIMES; Calling Them Misogynists Would Be Too Kind

By MICHIKO KAKUTANIJUNE 1, 1999

BOOKS OF THE TIMES; Calling Them Misogynists Would Be Too Kind - The New York Times

One piece in ''Hideous Men'' reads like a parody of Nicholson Baker, providing a minutely detailed account of the emotions going through a 13-year-old boy's head as he dives into a swimming pool.