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羊男読書日記 このページをアンテナに追加

2017-05-06 シベリヤの旅

シベリヤの旅」チェーホフ

有名なのはサハリン島」だが、その旅程でシベリア横断したとき雑記のようだ。

雑誌への掲載文らしいが、シベリアのまんなかあたりのエニセイ地方の記録しかない。

目的地であったサハリンに着くこと、そしてその苛烈さに当てられて、途中の旅行記が書けなかったのかも知れない。

この時代1890年旅行、そしてシベリア地方悲惨を極めている。

チェーホフより少し前、1878年明治11年)に、榎本武揚サンクトペテルブルクからロシアの実情を知ることを目的シベリアを横断している。

その手記も残されているが、チェーホフ同様に過酷な旅を書いている。

その旅のなかに逆境に生きる人々の姿が色濃く描かれている。

この時代悲惨さは20世紀になって書かれた「怒りの葡萄」とも通底している感覚がある。

流浪というのは旅とは違う。

旅行者には帰る場所がある。

しかしそこに住む者には目指すところはない。

それでも離散しなければならないとき、人は流浪の民となる。

シベリアアリゾナにも流浪の果てに楽土はなかったのだ。

2017-05-01

「蛍」村上春樹

とてもこじんまりとした世界物語

いまでは当たり前の語り口なのだが、やはり近代小説とはかけ離れているのが、印象に残った。

戦後という時代はなにか有用なことが前提に、あるいは根底にないと不安時代だったのだろう。

いまの不安自分ノート周囲100メートルぐらいなものなのだが、その周囲がとても複雑になっているということか。

それにしても、死んだ友人の彼女との会話が痛々しい。

2017-04-30 あの丘越えて

[]あの丘越えて(1951)

1951年昭和26年)。主役の子供は美空ひばり

演技はともかく、確かに歌のうまさは天才的。

戦後シンデレラストーリーそのもので、あまりにストレートで素朴な話の流れがゆるくて気持ち良い。シンプルという低音は強力だ。

複雑な構成しかあえない現代からみるとあれこれ突っ込みどころは満載だろうが、そうやって見るものではない。娯楽のありかたは当時、どのようなものだったか想像を促される見方が望ましいのだと感じる。

2017-04-29 火葬

[]「火葬

火葬クリストファー・プリースト

夢幻諸島」譚の短編ひとつ

誘惑という文学的モチーフ文化人類学的に転倒させ、見事に読者を驚嘆させてくれる。これほどまでに考えぬかれた物語構成はいままであまり読んだことがない。いやそれは大袈裟だが、SFとしてのナラティブなのか、英国伝統シニカルさなのか。秘境というジャンルとしても語れるほど、世界観も広い。

2017-04-28 娘十六ジャズ祭り

[]「 娘十六ジャズ祭り

昭和29年作。ジャズ少女歌手雪村いづみを主役にしたあまりにも良き昭和時代を描いた映画

良き昭和という言葉は溢れているが、精神的な意味で、民主主義的に健全なのだ

敗戦でもう後戻りはない、という精神性もあったのだと思う。

ジャズストーリーがとにかくちぐはぐで笑いを誘うが、翻訳されたジャズを歌う雪村いづみ新倉美子のシーンは素直にいいと思う。

娘十六ジャズ祭り | 映画-Movie Walker

2017-03-19

いまの文学者

今、文学者というと、ふたりしか思い浮かばない。

高橋源一郎堀江敏幸である

小説家はいっぱいいると思う。

村上春樹を筆頭に、いくらでも小説を書くために生まれてきたひとはいる。

でも、小説も書くけど、文学、とういう大文字を考えている小説家はいはいないと思う。

高橋源一郎はそれを戦略的にやっている。そういう小説も書いている。

堀江敏幸はそれを意識的に避けている分が反転的に文学的にならざるを得ない構図となっている。

いずれ、あと100年も経てば村上龍文学者になるのだが、このいまでは文学者ではない。

なにかそこにはぶんがくを成り立たせようとする輪郭のようなものふたりのはある。

意図的であるにせよ、回避であるにせよ。

2017-03-17

コンラッドの描きたる自然について」夏目漱石

明治の頃は小説にも使命があると考えていた人が多かったのだろう。

漱石コンラッド小説を模して、「自然の経過は人情の経過と同じような興味をもって読む事のできるものだ」と言う。

正道とやらを作って自分祭り上げる人はいまでもたくさんいる。

うざったいものだ。

2017-03-01 2017年2月の読書

[]2017年2月読書

2017年2月の読書メーター
読んだ本の数:3冊
読んだページ数:824ページ
ナイス数:18ナイス

カッパ・ブックスの時代 (河出ブックス)カッパ・ブックスの時代 (河出ブックス)感想
ビジネス本的な紹介というか話題が多いような気がして、いまひとつ馴染めな買った。あるいは文章がそうなのか。カッパの初期の本は面白そうなんだけど、古本通な話題がないところがいまひとつだったのかも。
読了日:2月25日 著者:新海均
おなかがすいたハラペコだ。おなかがすいたハラペコだ。感想
著者も読者も年取ったんだろうけど、相も変わらず飲食話題が汲めども尽きない。いつまで付き合えるのか。思えばサブカルも遠いところまで来たもんだ。
読了日:2月25日 著者:椎名誠
アジア学の宝庫、東洋文庫 東洋学の史料と研究アジア学の宝庫、東洋文庫 東洋学の史料と研究感想
文章が寄せ集めみたいに思えて、集中して読めない。単なる思い出みたいな話もあれば、論文みたいな素っ気ないものもある。それでもなにか一貫性があればいいのだが、ただ東洋文庫にまつわる「コト」を一緒にしただけな感じ。
読了日:2月4日 著者:

読書メーター

2017-02-11

ひとりっ子グレッグ・イーガン

可能世界を縦横に描いた短編面白い

面白いがあまりに複雑で理解しきれない。

ポンチ絵を描いてみればいいのかもしれない。

とにかく現在、最新鋭の小説だろう。

2017-02-04 SFマガジン 2016年 10 月号

[]2016/10

ケリー・リンク以降――不思議を描く作家たち

ジャンルの境を軽々と越え、魅力的な「不思議」に

あふれた作品を描く作家たちの作品を紹介する。

OPENチャールズ・ユウ/円城 塔訳

「弓弦をひらいて」ユーン・ハ・リー/小川 隆訳

魔法使いの家」メガン・マキャロン/鈴木 潤訳

ワイルド家の人たち」ジュリアエリオット/小川 隆訳

新しい小説たち。ジュリアエリオットは有力株。