澁澤さん家で午後五時にお茶を

「澁澤さん家で午後五時にお茶を」種村季弘

幻想文学の二大巨匠といってよいのか、どうか。
文学だけではなく、魔的な絵画や博物誌にまで及ぶのは、このふたりに共通した何かしらである。
その盟友が澁澤龍彦に関する書評やエッセイを一冊にまとめたもの。
1970年以降約四半世紀の間に書かれた32編だそう。

的確な言葉では推し量れない、澁澤龍彦を盟友である種村季弘が語った贅沢な本である。
必ずしも「澁澤龍彦」論ではなく、彼との交友と日乗を綴ったものであり、昭和に彼らの本を読んで育った文学青年たちには当時が偲ばれるエピソードが満載である。
ノスタルジックな話ばかりでなく、種村さん特有のユーモアに溢れているし、硬派な読解もあり、硬軟入り混じる、広がりのある本である。
それにしても昭和という時代が疾うの昔に終わっていることを思い知らされたなあ。