させていただきます

なぜか「始めます」と言えなくて「始めさせていただきます」と言ってしまう状況は無茶苦茶こころあたりがあるので、ビジュアライズしてみた。

すると、客先にプレゼンしている俺と先方のキーマンである担当者とその上司の部長が見えてきた。明らかにこのプレゼンの中身は担当者に向けたものだが、「始めさせていただきます」という言葉は部長の方を向いて言っている。この部長は技術的な詳細は理解してなくて、そのことは俺も担当者も承知していて、実際俺は担当者の方を向いてプレゼンをしている。

じゃあ、なんでこの部長がここにいるかと言うと、どうもこの「始めさせていただきます」という言葉を受けるためにいるみたいだ。いてもいなくても同じようなもんなのだが、俺と担当者が二人だけで話をすると、どうしても根回しになってしまう。話は進むかもしれないが、決定内容に重みがない。セレモニー的な意味をこめて最終的な結着をつける時には、「始めさせていただきます」を受ける人間が必要だ。サラリーマン用語ではないが、この機能を抽象化して言えば「主賓」じゃないだろうか?

「始めます」という言葉は、俺が個人としての担当者に向けて発する言葉。「始めさせていただきます」という言葉は、俺が主賓に向けて発する言葉。そして、この主賓という機能は片岡義男さんが言う「場」というものをリプリゼントするものだと思う。「始めさせていただきます」と言わされてしまうと、妙に腹がたつと言うかなんかスッキリしない気分になるのだが、部長さんに恨みがあるわけではなくて彼が体現する「場」と言うものに長年悩まされていているからだろう。