前のエントリーを書きながら、漠然と「ツッコミビリティとトレーサビリティ」という枠組みを考えました。
ツッコミビリティは、「言説の反論しやすさ」くらいの意味で私が作った造語で、トレーサビリティは主に食品の追跡可能性として使用されているようですが、ここでは、これを次のようにネットの中の言論の為の用語として再定義して使用します。
ネット上での代表的なメディアを例示すると次のようになります。
ツッコミビリティ高 | ツッコミビリティ低 | |
---|---|---|
トレーサビリティ高 | ブログ | マスコミの運営するサイト |
トレーサビリティ低 | 2ちゃんねる | ジオシティーズ等の無料ホームページ |
ネット以外のメディアを例示すると次のようになります。
ツッコミビリティ高 | ツッコミビリティ低 | |
---|---|---|
トレーサビリティ高 | 演説 | 出版 |
トレーサビリティ低 | 便所の落書き | チラシ |
そして、それぞれのメリット、デメリット
メリット | デメリット | |
---|---|---|
ツッコミビリティ高 | 間違った情報、偏った意見を発信元で封じることができる | 言論の自由への心理的な障害となる |
ツッコミビリティ低 | 発言の心理的負荷が低い | 間違った情報、偏った意見を広める可能性がある |
トレーサビリティ高 | 間違った情報、偏った意見を事後に批判し、訂正に導くことが容易 | 言説の中身でなく発信者の属性による評価を導く |
トレーサビリティ低 | 個人の本音、内部告発等を発信しやすい | 無責任な意見を生みやすい |
一見して、ツッコミビリティとトレーサビリティは相補的な性質があるように見えます。つまり、トレーサビリティを切るならば、代わりにツッコミビリティを高くすべきであるということでしょうか。
特にこれという結論は無いのですが、一般的に「ネットにおける匿名の情報発信」と言うとトレーサビリティの有無の問題だけに目が行きますが、同じ匿名メディアであっても、トレーサビリティの代わりにツッコミビリティを提供している2ちゃんねるとその他は分けて論じるべきだと思います。また、ブログとひとことで言っても、実名までのトレーサビリティがあるものと、ハンドルネームまでのもの、単発テーマの使い捨てのブログ等は区別すべきかもしれません。