勝手に修羅場ってはみたものの、公式的には、別に修羅場である必要はなかったらしく、周囲は「あー、進んでるんでしょ? なんか問題は? ないよね?」くらいの言及度で終了。うーむ、完全に周囲を巻き込み損ねてるな。まいっか。「誰もやりたがらないことを、一人だけやりたい(一応、やる必要はある)」というのは、好きにやるにはむしろ理想的な状況だ。競合しない。文句の言われようがない。

しかし今回はひどかった。更年期に入りかけたのかと思うくらい、正月ぼけって、いくらなんでも20日までは続かないよね、と自問自答するくらい、去年からの宿題に手がつかず、48時間くらい肘掛け椅子に滞在して、やっと今朝になってから手をつける始末。食欲は異常昂進するし、元々体内物質はちょっと数値がおかしいので、その辺りのせいかと思ったが、つまりは気合が足りなかっただけのようだ。いろいろ理由をつけて、締切を前倒ししようと工夫をこらしてみたが、結局は、本当の締切まで体がその気になってくれなかった。旅行、行っときゃよかった。本、読んどけばよかった。

また、1月のドラマのチェックが忙しくてさ。『ヴォイス』だけは、いかに瑛太でもぬるくてやってられないが、『トライアングル』はお気に入りだし(なんか、サブリミナルを入れてるんじゃないのか。『さよならは 言わない』がかかると、毎度懐かしくてたまらなくなる)、『銭ゲバ』で松山ケンイチに惚れ直し(脚本は岡田惠和で安心)、野島伸司がまた何を始めたかと『ラブシャッフル』につきあい、初回の栄倉奈々のブスっぷりに、好みとは全く異なるものの『メイちゃんの執事』は意外にいけるかも、と思う。『天地人』の、あのキャストの交じり合わない感じはなんだろう。座りが悪いなあ。北村一輝、オーラが妙に薄くなってない?

やる気になるための、一番手っ取り早い方法の一つは、テレビをオフにすることだ。そして、締切を気にしなくなる一番の方法は、「毎日締切がある」ことではないかと、ひそかに疑っている。優先順位が低くなると、昔苦しんだ課題も、とたんにやすやすとクリアできるようになるという、ひねくれた快感(かといって、現在最もプレッシャーのかかっている課題の難易度が、昔より高くなっているわけでもない)。

自分の中で方向性が定まっているというのは、生きるのを楽にする。というのは、周囲の評価がどうでもよくなるので。わけもなく他人にまとわりつくわけにはいかないが、「聞きたいこと」「知りたいこと」のコアが比較的固まりやすいので、アクセスしやすくなる。去年知り合ったばかりで、実はよく知らない、という人たちの飲み会が1週間で3件。弊害もあって、いい気持ちでうっかりいろいろぺらぺらしゃべったところ、愛想を尽かされたかな、と思う友人一名。無理ないかもなあ。世間的に、ちゃんとしてなさすぎる。

ちょっと時間があったので、青山のゼンハイザー・ジャパンに、ヘッドフォンの修理を頼みに行く。ここ半年くらいケーブルの調子が悪くて、入らないFMの電波を探すのと似たような感じでiPodの角度をマニュアルで調節していたのだが、さすがに限界になってしまったのだ。愛用の『ゼンハイザー 密閉型ヘッドホン HD25-1 II【国内正規品】』を購入したのが2000年だから、もう購入店に修理を頼む意味はなく(イヤーパッドは既に3代目)、だったら直に修理に持ち込んだほうが早そうだと思って。1週間くらいかかることも覚悟していたのだが、高級品の割に無骨な外観に似つかわしく、ケーブルはその場で取り外して、新しいものに付け替えられるという。しかし、ケーブル1本5000円(Prod. Code 523874)。通販で取り寄せれば、少なくとも2割は安いだろう。しかし、ここはまあ、時間と労力を買ったと思って。「こちらでお取替えしましょうか」と尋ねられたので、当然のごとくほいほいお願いしたのだが、後で、本来なら修理代は有償だったと聞かされる。「わざわざこんな雨の中をおいでくださったので、サービスです」とのこと。お兄さん、ありがとう。

見違えるほどクリアになった音に感動しながら、接触不良だけではなく、ケーブル自体がへたってたんだなあ、と気づく。なんせ8年以上も酷使しているのだ。ケースやカバーなしで、なんでもかばんに放り込む私に、ここまで付き合ってくれる物は少ない。3万5千円は安い買い物だった。一時的な効果で、雨の街が色付きに見える。多少の虚脱感や虚しさにも、今回は失速せずにやっていけるんじゃないか、という気がして、我ながら機嫌がいい。しかし、次の流れが見えた、ということは、今の仕事の契約は今年で最後になるのかもしれない、というような気が、ふとする。

P.S. 後で調べてみたらなんと、ケーブルは通販で取り寄せるより安かった。送料まで考えると、断然得だったことになる。