日経経済教室「あるべき経済政策」とは

3回連続で掲載された。
A 4/19 小野善康大阪大学特任教授「恒常的な雇用創出こそ筋」
B 4/20 稲田義久・甲南大学副学長「賃上げ通じ消費底上げを」
C 4/21 森信茂樹・中央大学教授「所得・資産の再分配進めよ」

それぞれ立場の異なる論者の主張は興味深い。

ところで安倍首相からおかしな発言が出ている。消費税引き上げ(14年4月)のダメージは大きく、15年4月以降も引きずっている、と(注)。Bで稲田教授は15年の実質賃金は4年連続の減少になっていると指摘している。
消費増税が負のスパイラルの引き金になったということであれば、首相の説明はそれなりに成り立つ。だが、負のスパイラルが生じていない以上、消費税増税の影響が2年目にも及ぶことはあり得ない。2年目にも低迷しているのは、経済政策が消費を押さえつけていると見なければならない。
(注)3/29産経:(3月)22日の会合では、出席した首相が、(平成)26年に消費税率を8%に引き上げたことで、個人消費が「今も影響を受けている」と言及した。
http://www.sankei.com/premium/news/160328/prm1603280003-n2.html

3本の論文に戻る。この3本の論文で共通するのは、アベノミクスのトリクルダウン効果はなかった、中間層の所得を底上げして消費を活性化せよということである。

14年4月以降の消費に大きな影響を与えた政策としては、①消費増税の先送り、②法人実効税率の引き下げ、がある。①は消費低迷の原因にはならないだろう。②は直接には消費には無関係に見えるが、トリクルダウン効果が発揮されるはずの政策である。企業の利益が増えれば、それが勤労者にも降りてくる、と。ところが、それ以前から資金余剰主体となっていた企業にさらに税率を引き下げて資金をため込めさせるだけで、勤労者へは滴り落ちてこなかった。政府はベア実施などと号令をかけても会社の金庫に入った資金は出ていかない。

Aで小野教授が唱えるように、「恒常的な雇用創出こそ筋」、「保育介護など充実を」に法人減税の資金を振り向けるべきであった。
Cでは森信教授は、「所得・資産の再分配進めよ」、「社会保険料の負担の軽減を」と唱える。

法人減税を行う余裕があればそれをもっと効果のある施策に振り向けていれば、ここまで消費が落ち込むことはなかったと思われる。