心地よい退屈

 大槻ケンヂ行きそで行かないとこへ行こう」(新潮文庫ISBN:4101429219)読了。1992年に上梓された単行本の文庫版です。
 ちなみに、今夏における私の行動指針は「読みそで読まない本を読もう」。一時帰国した際、古書店に行って特売になっていたものを、とにかくスーツケースが一杯になるまで連れてきました。そんなわけで当分、作家が脈絡なく入り乱れる書評になるのですよ〜
 この人の文章、かねてから読んでおきたいと思っていたのですけれど、ようやく果たせました。理由は、例によって例の如く、TINAMIでの高橋龍也氏インタビューにおいて、「雫−しずく−」は「新興宗教オモイデ教」が下敷きになっている――と聞かされていたからなんですが。
http://www.tinami.com/x/interview/04/page1.html
 面白かった。
 エッセイ集なので気楽に読めちゃう。中島らも氏との対談場面が出てくるのですが、ノリが似ている。筆の運び方もいい。作詞も手がけているということが作用しているのでしょうか。1つのフレーズの区切り方が短く、さくさくっとした食感。上手いなぁ。
 登場するのは、浅草のレンタルビデオ店、夕張のラーメン店、通天閣ビリケンさん、渋谷のムルギーカレー、新宿のホモ映画館、浅草のストリップ劇場、日光江戸村などなど。
 幾つかの短編は評価が落ちます。テーマの重苦しさに、執筆者が呑み込まれてしまったんだろうなぁ。それを差し引いても、作者の力量を感じさせる一冊でした。

行きそで行かないとこへ行こう (新潮文庫)