11-M

 「マドリード列車同時爆破テロ事件」から2年を迎えます*1
 しかし,日本で顧みられることなど無いのでしょう。米国と中国のことしか見ていない日本のマスメディアには,何も期待などしていません。
 せめて,当所を見てくれた方だけでも思い出していただければ,嬉しく思います。
http://www.el-mundo.es/documentos/2004/03/espana/atentados11m/
http://news.bbc.co.uk/hi/spanish/specials/2005/madrid_1anio/
http://www.abc.es/informacion/11m/index.asp
http://www.elpais.es/comunes/2004/11m/

*1:11-Mは,「3月11日」のスペイン語表記(11 de marzo)を略したもの。

大学院はてな :: 説明義務と不法行為

 研究会にて,東邦生命保険事件(東京地判・平成17年11月2日・労働経済判例速報1923号22頁)の検討。
 被告Y社では,営業譲渡に先立って1998年2月に希望退職を募集した。この際に配布された文書では,今後10年間は会社が存続するものとして再建計画が述べられていた。しかしそれからおよそ1年後,監査法人が不適合と判断をしたことから1999年6月4日に破たん。
 そこで原告Xらは,

「Yは,雇用契約に付随する信義則上の義務として,希望退職制度を含む退職制度を実施するに当たっては,制度内容や制度を選択した場合の利益,不利益に止まらず,制度を選択するに際してその判断の基準となる会社の業務状況や業務の具体的な見通し等についてXらに対して説明し,Xらに損害を被らせないように配慮すべき義務があった」

と主張し,本件では希望退職に応じるか否かを判断するのに必要な情報が提供されていなかったものとして,各300万円の損害賠償を請求した。
 裁判所は,請求を棄却。
 差額賃金(早期退職制度を利用できていれば受け取れたであろう上積み部分)の請求ではなく一律の損害賠償を求めていること,無効構成ではなく違法構成をとっていること,制度を利用しなかったことの帰責性が労働者側にもあること――など,かなり変わった特徴を持つ事件である。
 本件事案の下では,500名の希望退職募集に対し600名を超える応募が現にあった。Xらは同じ情報を与えられていながらこれに応募しなかったものであり,相対的にいって状況判断を「見誤った」ものと思われる。その意味では,請求を認めなかった結論は妥当だろう。
 しかし,裁判所が説明義務の内容を次のように狭く判示している部分は疑問である。

「さらに進んで,当該企業が雇用する従業員に対し,希望退職制度の実施に当たり,同制度採用当時における業務状況の詳細や再建策実施後の将来の見通しについて具体的根拠を示して説明をすべき法的義務は,特段の事情がない限り,これを肯定することはできない。」

 日本の判例法理には,「整理解雇の四要件」のように“立ち直る”ためのルールはあっても,“散りゆく”ためのルールが未整備だということが感じられた。