ブログを体験してみる

はてなダイアリーの創設時期からブログを体験してみようと書きはじめてながい年月が経過した。

エッセー教室のあとハーバーに行った。

日差しがつよかった。ジャケットは脱いだ。

「ひらひら」が上架さて船台に乗っていたていた。

ユーエスヨット&カスタムズの北橋さんの姿が見える。

船底まわりの点検がすんで、海に船をもどした。

一時間あまり、機走と帆走の具合を検査した。
船底が綺麗になったのでエンジンが軽快だ。
居合の稽古に行くまでの時間、ポンツーンの「ひらひら」で休んだ。


きょうエッセイ教室に提出したのはこんなだった。


栄西と為朝と定秀                       中村克博



 夜が明けようとしていた。
嵐は遠のいて風はおさまり薄香の浦は、さざ波も静かな海になっていた。
岸辺にぽつぽつと漁師の家が見える。
朝餉の用意だろう釜戸の煙がゆらゆらと昇りはじめていた。
 碇綱でつながった二艘は、先導する惟唯が乗る小早船にだけが舳先側に碇を入れて、
為朝の小早船とともに振り回しにしていた。
風の向き潮の流れにまかして船は向きを変えるが、今は二艘とも、ほぼ真西に舳先を
向けていた。その先に薄香の湾口が見え、小型の帆船が数隻碇を入れている。
湾の差し渡しは五町ほど(五百メーター)奥行は七町ほどある。
為朝のそばで船頭が入り江のまわりをうかがっていた。
「葦が浦から船が出てくるようです」
「葦が浦、栄西禅師が数年前、南宋から帰国されたおり、最初の上陸場所だな」
葦が浦は薄香の湾口を南に奥深い入り江になっている。
入口が狭く、まわりは高い山に囲まれ古代からの良港で栄西が二度目の宋からの
帰国のときに最初に上陸した場所だとされる。
栄西は日本で初めての禅規を葦が浦を見下ろす冨春庵でおこない。
南宋から持ち帰った茶の実をその近くに植えたとされる。
「戦船のようです。ひ、ふ、み、よ、次々に出てきます」
「ほう、おなじ間隔でこちらを向くようだな」
「浦の口をとざすようです」
「そのようだな」
 水夫たちも葦が浦の方を見ている。小さな話し声がぼそぼそと聞こえる。
屋形の中から一人の武士が為朝のいる艫屋形に来て下知をまった。
「弓に弦を張っておこうと思います」
「そうだな」
「盾板は、いかがいたしますか」
「うむ、もう少し松浦方の動きをみてからにしよう」
「かしこまりました」
 惟唯の船が、後ろの船とつながった碇綱を引いている。
為朝の船は徐々に近づいて、惟唯が挨拶のお辞儀をした。
水夫たちが長い手鉤を持って前の船の左舷によせて舫った。
惟唯が為朝の船に移ってきた。 
「浦の口の戦船がふえる前に突進しますか」
「向かい風になるな」
「薄香の奥にいる大きな交易船を奪うこともできます」
「それは、こちらから仕掛けることになるな。芦辺に迷惑がかかろう」
「浦の出口を閉ざすことは戦を仕掛けたのではありませんか」
「そうだな・・・わしは、そなたの船にのせてくれ」


「私は、こちらに残るのでございますか」
「いや、一緒に前の船に乗ろうとおもう。こちら船の差配は高木の次郎にたのもう」
「かしこまりました」
「ゆっくりと、浦の出口に向かおうと思う」
 為朝の移った小早船は碇を上げた。
 二艘の小早船は前後に並び、櫓ではなく十挺の櫂を使って進んでいった。
 櫂ならば甲板にしゃがんで盾板で矢を防げる。
 二艘を結ぶ碇綱はとかずに、張らずに、たるませて進んだ。
「二十艘ほどが三ツ星の旗印をかかげています。帆をおろしていますね」
「手前にいる五艘ほどが左右に分かれるようだな」
「薄香の奥からも五艘ほどが距離をおいてついてきます」
 その五艘のうちから一艘の小早船がぬけて前に出てきた。
「停船するように言っておりますが、いかがいたしますか」
「とめてみよう」
惟唯は後ろの船にもとまる合図をした。
後ろの船の船頭が先方と話をはじめた。
昨夜の嵐で避難したのだと説明しているようだ。
松浦の旗印を船尾にかかげて水夫のほかに胴丸をつけた武士が三人見える。
三人は兜でなく烏帽子をかぶり、弓も薙刀もなく、小ぶりな打ち刀を差していた。
三人の武士が乗った小早船は為朝の乗る船の左舷に進んできた。
「このたびは嵐に難儀され、ご苦労さまでございます。役目でございます。お頭様の
お名乗りをお聞かせください」
「ゆえあって名のれぬが、私は芦辺の戸次惟唯と申します」
「戸次さまとは、壱岐では耳にしないお名前ですな」
「生まれは豊後でございます」
「船荷の改めをいたします。乗船をお許しください」
「それは、なりませぬ。嵐の避難は相身互い。ぶしつけでございましょう」
「名も名乗らぬ。改めもさせぬでは役目がはたせませぬ」
「ならば、ならば弓矢でお役目を果たされるがよろしかろう」
 惟唯は前後する二艘の船頭に命じて船を進めた。
 エイサー、エイサーと掛け声がしだいに力強く早くなっていった。
松浦の小早船が五艘、距離を保ってついてきた。
前にいた五艘の小早船は左右を挟むように並走していた。
湾の出口には小早船の帆柱が朝日に輝いて林立している。
盾板を船べりにめぐらし、水夫には打ち刀と銛がくばられた。
「北側は船が手薄ですが浅瀬があるようです。中央を突破します」
「そうだな」
「二艘が帆を上げて並走してきます。あいだに太い綱が張られています」
「綱でからめとる手筈のようだな」
                               平成二十六年五月十五日