シャドウゲーム

まだまだ風は冷たいが、日向ぼっこするにはちょうどいい穏やかな春の陽射しである。週末の雨を境にさらに気温があがり、一段と春が近づく予報だ。ひどく強い風も春一番と思えば頬も緩む。
▼ほぼ2週間ぶりの休みである。その2週間前も早朝から昼過ぎまで働いた後やっとのことで離脱したのだから、実際には3週間ぶりだ。やはりスタッフがひとり抜けた穴は大きい。また例年並の忙しさに戻ってしまった。しかし社員ひとりひとりが負担を感じるくらいの出来高をこなさないと、会社として利益が残る水準にならないことは感覚でわかる。傍から見れば週休二日で有給消化も義務づけられ、一年の半分くらいしか働いていないように見える好条件の大企業だって、実際の必達ノルマが厳しいものなら仕事をうちに持ち帰らざるを得ない。楽して儲かる商売なんてない。それは成果と報酬がリンクしている世界では例外なく同じである。従って労働条件が成果とリンクせず独立して決められている公的部門では債務が際限なく膨らむことになる。仮に野田総理が消費税を上げることに成功しても、財政規律がさらに緩むだけだろう。
▼別に利益をあげ続ける必要はないという考え方もある。そういう人は今すぐ収入が半分になっても文句は言えない。会社の収支に責任はもたない、自分の収支だけは気にするというのは筋が通らない。派遣の条件がひどいというが、決められた場所に通って決められた労働をして帰ってくるというだけなら、生物としての自分ひとりの身体を維持するに足るだけのサラリーが適当だろう。責任をともなわない気楽さと引き換えにえられるものはあまり多くはない。世の中は厳しい。だからこそ息抜きが必要だ。休日を有意義に過ごして明日からの戦いに備えるのだ。
▼午前中に先週すっぽかした無呼吸のツキイチ検診と社員旅行用のパスポートを取得し、午後から妻とランチでデート。今日はお肉屋さんが経営している肉料理店に行ってみた。妻は鶏の香味焼定食。僕はとんかつ定食を注文。


がっつり系の僕たち夫婦にも大満足のボリュームである。これで一人前八百円。先々週のひとり千五百円の鳥の餌に比べれば格段のお得感だ。
▼その後妻の買い物につきあってスタバでコーヒーを飲んだ後、映画「シャーロックホームズ・シャドウゲーム」を観にいく。

結婚前は妻とよく映画を観に行ったものだが、結婚後はとんと行かなくなってしまった。その理由は、観たい映画が重ならないのでお互い別々に行くようになってしまったからだ。妻はアクションやコメディのようないわゆるエンターテイメントものが好きで恋愛ものや文芸ものは苦手。一方僕はミニシアター系が好きなのでいつも「ネクラ」と非難される。今日のチョイスはもちろん妻のもの。結論から言えば面白かった。シャドウゲームとはシャドウボクシングのようなもので、ホームズが敵と戦う前に頭の中で相手を倒すイメージを描くことを指す。勝つためには予行練習が必要だ。出たとこ勝負ではダメ。仕事でもなんでもそうだ。逆にエンターテイメントだけは考えなくても手放しで楽しめるものがいい。僕だって小さい頃から柄谷行人なんか読んでたわけではない。コナンドイルや江戸川乱歩に心躍らせていたはずだ。また妻に教えられたね。
▼うちに帰って妻のウチゴハン鳥皮酢にナスのトマトパスタ。


明日からの戦いの活力源にはなったが、僕はシャドウゲームを怠ってしまった。またぶっつけ本番だ。トホホ…