- 作者: 塩野七生
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1991/06/28
- メディア: 文庫
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何か他の本で概要を読んだので、そのつもりになっていたのでしょうねぇ。
レパントの海戦というと、何やら海戦史上ではエポックメイキング的な印象がありますね。
では実際のところはどうだったのかということが海戦の前後の状況から詳しく述べられています。主にヴェネツィアからの視点で。別に著者がイタリア贔屓というだけでなく、史料の点からも仕方ないかもしれませんが、本当はトルコ側からの視点ももっと欲しかったものですね。
海戦自体はガレー船同士の最後の大掛かりな戦いという点だけでなく、ヴェネツィア・トルコの海軍運用面の違いとか事前の西欧各国の事情が興味深いですね。西欧側も建前上は十字軍であっても、各国の利害がまったくかみ合わない為にせっかく得た勝利を拡大できなかったわけですから。
この輝かしい勝利を頂点として、ヴェネツィアは海軍国トップの座を明渡し、徐々に衰退への道を歩んでいくことが示唆されていますが、何やら第二次世界大戦後のイギリスを彷彿させます。そういう意味でも歴史的意義は大きかったのだろう、と感じました。
*1:本作以外では『コンスタンティノープルの陥落』と『ロードス島攻防記』