6期・41冊目 『城の中のイギリス人』

城の中のイギリス人 (白水Uブックス (66))

城の中のイギリス人 (白水Uブックス (66))

出版社/著者からの内容紹介
 ピエール・モリオンの匿名で秘密出版されていた『城の中のイギリス人』がようやく仮面をぬぎ、真の作者マンディアルグが登場した。実験的性の追求者モンキュが、閉ざされた城の中でくり広げるエロとグロの情景は、読者を性の歓喜の夢幻境へ誘う。まさに、現代の文学的ポルノグラフィーの傑作。

ポルノ小説というものは詳しくないのですが、発禁処分・匿名による秘密出版という過程を得た本作は残酷で破廉恥でエロティックさに満ちて、というかそれしか書かれていないわけで、ポルノ小説の中でもかなり過激な部類に入るのではないでしょうか。自分の知る中でこれに相当する小説は友成純一の『狂鬼降臨』くらいかと。*1
それでもどこか文学的香りを醸し出しているのは渋澤龍彦による訳と、城の主人であるモンキュの性の追及者たる言動の所以か。


旧友モンキュの招待によって城に来訪した主人公に混血少女がつきっきりでお世話してくれるあたりはまるでエロゲーのようですが、そんなのはまだまだ序の口。
衣食住揃った倒錯趣味の数々、城内で連日繰り広げられる饗宴いや狂宴にはにはまともな神経ではついていけません(笑)
主人公視線が意外と淡々としているんでつい読んでしまうのですけど。
そしてクライマックスの実験では大切なものを目の前で壊されていても性行為が可能かという残酷と悪趣味の極み。
やがて主人公が去った後、モンキュの暴走は城ごと自爆という幕切れを迎えるのでした。


余談ですが、その煩悩のままやりたい放題だったモンキュが地元では名士として扱われているのが皮肉ではありますね。

*1:『狂鬼降臨』はエロよりグロだけど