情報倫理講座

なかなかに勇ましい名前である。情報という言葉には単なる知識という意味だけでなく現代においては高度に戦略的な含みがあったり、あるいは各種の資源的な視点を付与されたりするし、最近では遺伝子に対する存在としての文化情報の素晴らしく面白い理論が生物学者リチャード・ドーキンスらにより形成されつつあってなかなかに一口では言えない。また倫理に至っては言うまでもなく古代より数多の偉大な思想家達の口から語られながら未だ語り尽くされない人類の至上命題の一つといえる。
のだがその実体は我が大学でのコンピュータ利用におけるマナー講座なのであった。恐ろしいことに、すべての新入生はこれを学期始めに受講しないともれなく学内でのネット利用が不可能になるらしい。具体的にはこの禁止措置が発動すると、インターネットのブラウジングは元より学校側から提供されたアドレスでのメール受信すら拒否されることになって、不便極まりない。あまつさえ研究室にあるLANソケット経由のアクセスも同様なのだ! ああ本当に迷惑な話である。というわけでばっちりネット利用が禁止された私は、本日嫌々受講しに行くはめになった。やだなあ。

おまけ:リチャード・ドーキンスのキーワードをたぐった先のid:ykurihara:20040520#1084987843で面白いものを見つけた。トンチキ論文ジュネレータだそうな。ハーレクイン・ロマンス・ジュネレータと言い、あっちの人はこういうの好きだなあ。

 清瀬みさを 人文学としての芸術研究 法律文化社

世界には唯一の学知のみが存在する。それは素描であり、絵画と言い換えてもよいが、総てはそこから派生する      ミケランジェロ
美とは何か、わたしはそれを知らない      デューラー

イタリアルネサンスを中心に据えて、芸術(ことに美術、あるいは視覚芸術、造形美術と呼ばれるもの)の歴史と思想を解説。古典時代のギリシアに始まり、ルネサンスの中自意識に目覚め、自己の価値を主張するまで、人の手になる創作の中でも下位におかれた視覚芸術とその担い手たちの物語。けして平易なテーマばかりを扱っているわけではないが、そのウィットに富んだ文章と美しい文体はページをめくる手を止めさせない。難解な内容を易しく、退屈な内容を面白く、多くの金言箴言を交えて語る。美術思想の概観に向くのみならず、私のような門外漢の芸術入門書としても素晴らしい一作。