福島へ




福島の津波被害が大きかった町に取材に向かう。
仙台から車で一時間の旅だ。
沿岸から続く平地はまっさら。
集められた瓦礫の山に圧倒される。
しんと静まり返った港には、
漁に出られない漁船が墓標のように鎮座している。
熱心に当時の状況を説明してくれるが、
何を言葉にしていいかわからず、ただ頷くばかり。
それでも自分の身に置きかえることは不可能だ。
その時、その場所にいた体温にしか伝わらぬものがある。
私はもうじきこの土地を離れる。
闇を切り裂くレールの向こうに待っているのは、
朦朧と疲弊したネオンの瞬く都市である。