米 圧力で「骨抜き」 補佐官派遣しお伺い[東京新聞 TOKYO WEB]

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米 圧力で「骨抜き」 補佐官派遣しお伺い
2012年9月15日 朝刊
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▼全文引用



 政府は十四日、新たなエネルギー戦略を決めた。日本国民にとって将来の暮らしを大きく左右する重大な指針となるが、決定間際に野田佳彦首相が最も心を砕いたのは「原発ゼロ」に不快感を表明した米国の意向だ。長島昭久首相補佐官らを急きょ米国に派遣。お伺いを立てた末の骨抜き決着は、米への追随路線を極めたものといえ、今後の原発政策に疑問を抱かざるを得ない。(城島建治)

 「未来の世代に対し責任を果たすためにも一歩ずつ国民の皆さんと一緒に始めていきたい」

 首相は新戦略を決めたエネルギー・環境会議で「国民とともに」の姿勢をアピールした。だが、決定を前にした九月の動きを見る限り、首相が注視していたのは米側の動向であることは間違いない。ロシア・ウラジオストクでのクリントン国務長官との会談を皮切りに「原発ゼロ」への懸念表明が相次いだためだ。

 一九七九年のスリーマイル島原発事故後、米国は原発新設を中断。米国の原子力産業は日本が技術、資金の両面で支えている。日本が原発ゼロを打ち出せば、日本の技術力低下は避けられず、日米両国は原発増設を進める中国に原子力市場で主導権を握られかねない、と米側は不安視している。

 米側のけんまくに、政府は当初予定の十日決定を先送り。長島氏と大串博志内閣府政務官を慌てて米国に派遣する事態になった。中国、韓国との領土問題をめぐっては、冷静な対処を基本方針とする一方、時には強気な姿勢をみせるのとは、実に対照的だ。

 沖縄県の米軍基地再編問題などで、野田政権の対米追随は顕著になっている。政府内からでさえ「今回は内政干渉だ」との声が出ている。

 長島氏らは米国務省などの関係者と会談後、首相官邸に国際電話で状況を報告。「米側の反発が強い」(政府関係者)ことがあらためて分かったという。結局、新戦略には「日本の原子力政策は米国はじめ、諸外国との協力体制で行われている。諸外国と緊密に協議する」と明記され、米側へ配慮して後退した。

 十四日夕のエネルギー・環境会議後、首相が真っ先に会ったのは長島氏ら二人。長島氏が「今後きちんと議論をしていこうということです」と米国との協議が実質先送りになったことを伝えると、首相は「お疲れさま」とねぎらった。