追悼・緒形拳

合掌

 緒形拳が亡くなった。亡くなってしまった。
 テレビをつけた途端に、訃報の知らせ。「えーっ!」と思わずひとり声を上げた。悪い冗談にしか思えない。最近、地下鉄の駅のあちこちに新ドラマのポスターが貼られていた。その中に、相も変わらずの元気そうな写真が載っていた。だから、にわかに信じがたい。でも、画面の片隅に浮かぶ「急死」の文字……ああ、本当なんだなあ。
 亡くなる直前まで、このように露出が多く、かつ「精気」を漂わせた人も稀有だろう。だから、いまだ信じられない気持ちがどこかにある。観るたび「元気だなあ!」と思っていた。「老い」が忍び寄れたのは唯一、「髪の色素」だけだったんじゃないだろうか。
 などと、さも熱心なファンのように書いてますが……いや、全然そんな風には語れない。話題の舞台だったシアターコクーンでの「白野」(2006年10月初演、2007年11月再演)も見逃している。観ようと思えば観れたのだ。何度この手の後悔を繰返すのだろう。

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