8月18日(木)「ハチ公との惜別」


※手放したハチ公(数少ないハチ公のショットの中で最も気に入っている1枚)
 1月に購入したばかりのハチ公を下取りに出して、国産、ホンダのCB400SFに乗り替えることにした。なぜ突然に、こんな無謀なことをするかというと、私にしか理解できないのだが、主には、ハチ公の①重過ぎ、②高過ぎ、③熱過ぎ、④上品過ぎに起因する。
  まず①の重過ぎであるが、以前のロードスターよりはカタログ上の車重は大分軽いものの、低重心のロードスターに比べて重心が高いためか、取り回しはむしろ重たく感じる。センタースタンドの操作性もロードスターの方が完全に良かった。1年半のブランクで私の筋力が弱くなっていたのかもしれないが・・・。
  次の②高過ぎとはシート高のことで、身長の割りには足の短い私にはロードスターよりも足着きが悪くなり(ロードスターよりも2センチ高い)、①の重さとも相まって、スムーズな操作にやや難があった。
  そして③の熱過ぎが、実は一番の理由であるが、このハチ公は、これまで乗ったどのオートバイよりもエンジンの熱が下半身によく伝わってくる。納車後の寒い時期は、シートヒーターが付いているのかと思ったが、もちろん、オプションでもそんな設定はない。そして、先述したが、ついにこの夏。7月にクラブのツーリングで西伊豆に行ったとき、臀部から足全体にかけて熱風を感じ、特に左足のふくらはぎ部分が火傷をするような熱さのため、走行中に何度も足を外側に広げながら走るハメとなった。家に帰ってきたら、ブーツの高さ以上のところのふくらはぎが赤く火ぶくれしている。カウル付きの水冷エンジンでは仕方ないのかもしれないが、火傷をするのは我慢できない。この先、毎年夏は来るのに、この状態で乗り続けるのは耐えられないと、真剣に考えた。
  ④上品過ぎとは、ベルトドライブのためダートを走れないことや、ガソリンタンクが通常のオートバイの位置にないことなど。ダートは関係ないと思っていたが、いろんなツーリング先で、短くてもそのような箇所はやはりあるもの。また、ガソリンタンクではないのに、そのような形のダミーが付いているのが虚飾的でもある。
 もちろん、ハチ公の良い点もいっぱいある。BMW車らしい丁寧な上質の作りであり、デザインも色もやはり洗練されていると、日が経つごとに気に入っていた。メーター廻りのオンボードコンピュータも優れもので、そこに表示される燃料計や気温などは本当に便利である。走行性能も申し分ない。リッターバイクに比べればやや非力なものの、ギアチェンジなどを少しマメにすれば特段問題ない。純正のトップケースやサイドのパニアの使い勝手や作り込み(装脱着の簡便さ、インナーバッグの標準装備など)も良く、とても便利である。
 あれこれ考えた。このような良い点もあるが、自分にとっては乗りにくさが今までで一番多いオートバイであることは間違いない。事故歴、怪我歴のない私が初めて遭遇した走行時転倒事故も、この乗りにくさに関係していたように感じる。決定的なのは、火傷をするような排気熱である。夏にオートバイに乗る楽しみが無くなるのはなんとしても痛い。わずか半年間所有しただけで手放すのは何とももったいない話であるが、期間が短く走行距離も伸びていないだけに、下取り価格もかなり高くなるはずだと考えた。これからのオートバイ人生を本当に悔いなく続けていくためには、ハチ公の持っているような欠点の無い、真に乗りやすい車種をと熟慮(でもないが)した結果、ホンダのCB400SFと仮決定した。
  そこで、ハチ公を買ったBMWディーラーは系列に国産車専門店もあるので、まずはBMWディーラーの店長に相談に行ったところ、相当に驚いていたが趣旨を了解。親身に世話を焼いて系列店とも調整してくれて、こちらの予想以上の好条件でCB400SFに乗り換えができるようになった。相談に行った日は猛暑日であったが、ハチ公のオンボードコンピュータの気温計は36度を示し、案の定、足が焼け付くように熱くなった。暑さに強い、足の長い若者に引き取られることを祈りつつ、短かい付き合いで終わったハチ公と惜別した。この日が、10年余にわたるBMWオーナー人生との別れともなった。