放棄してしまった。

 新城カズマサマー/タイム/トラベラー」を途中で放棄してしまった。二度と読み直さないように、外の外法である「2巻目の最後をいきなり読む」処置も行った。これで、もはやこの本は読まない。読み直さない。
 何ゆえにこのようなことに至ったか。その理由は色々あるが、最大の物はやはり、私の中で「一人称語り」に対する敷居が高くなってしまったことだろう。
 この本の文章が悪い、というわけではない。むしろ「上手いなぁ」と思う。感情移入がどうと言う事でもない。というか私の趣味としては感情移入が拒まれるようなキャラの方が好きだし。*1
 じゃあなんだ、となるとこれはもう唐突ながら「私がらくえんが好きすぎる」という事に尽きるのだと思う。
 あの作品の一人称体。ぐだぐだとした日常。だめだめな日常。それをよりぐだぐだに、だめだめに書き表す、あの一人称体。その記憶が強すぎるのだと、思う。その為に、どうしても知らず知らずの内に比べてしまっていたのだと、思う。そして思ってしまった。不遜にも、「だるい」と。
 世の評価とかは、どうでもいい。ただ、「らくえん」が自分の中で最高すぎるのだ。近視眼ちっくなんだろうとは、思う。あれより優れた物なんて、そりゃあたくさんあるのだろうと思う。でも世の中の評価は、ほんと、どうでもいい。ほんと、「だるい」。だから、読むのを放棄した。
 
 むー。こんなんだと、今後も読めないのが増えていくのかもしれんなぁ。でも同じ一人称で「ライトノベル『超』入門」は読めたんだから、大丈夫なやつは、大丈夫なのかもしれない。いや、もしかしたらあの語りを読んだから、「新城さんが語ってください!」って気分になったのかも。あー。分からん。

*1:だから成田良悟作品が凄く好き

 感想 『鬼切り夜鳥子』(ISBN:4757728298)

桝田省治:佐嶋真実:ファミ通文庫:620+税円>

 内容を要約すると、「100%、いや120%の桝田膳じゃ…っ!」
 桝田さんのものは久しぶりだったので、余計そう感じました。ちゃんとした内容は学園ドタドタ承伏劇です。きっと。
 にしても全身刺青仕様ってのはエロいなぁ。絵師の方の力量もありますけれど、エロ成分に理屈を与える手腕はさすが桝田さんだなぁ、と思いました。
 さておき。
 なんか、妙に楽しかったです。
 出来としては上に書いたように「いつもの桝田さん」、つまりわりと豪快味で、悲観する間には動き出し、端々にサドで現実的で冷淡でグロでエロを垣間見せ、でもめでたしめでたし、でしめる、という具合なんで、オチの方向性とかが読めたりするんですが、それでも問題なく楽しかったです。
 あくまでエンタ、という指向が強い作り方だったからかもしれません。文学エンタで言えば確実にエンタの方向で、あとがきでこの本の「仕様」「指定」*1が明らかにされる所からも、「楽しませてナンボや」精神が良く見て取れます。これがいい具合に作用したのだろうなぁ。
 以下はネタバレ気味につらつら。

*1:最初は海法紀光さんが書く予定で、その為に書いた注文

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