感想 古橋秀之 『龍盤七朝 ケルベロス 1』

 内容を要約すると、「それは怪物と怪物の物語」。超人VS人外って素敵やん? とでも言ってみますが、いや、確かに超絶戦闘っていいものです。基本無茶、でもそれを説得力を持って騙るというのは、オタ男子の基本的な燃えツボであり、見事な仕事だと感心しきり。萌え? 武侠に萌えなんていらねーんだよ! って面構えですらありますが、まあ読む方としても、レーベルとしてもその方向性はイエスだね! って顔で応戦したいところであります。レーベル的に意外に死が近しい感じもしますから、ちゃんと続きが続けば、ですが。キャラいい具合に立ってたし、話としても先の無茶さを期待させる続き方だったから、本当にきっちり続き出て欲しいものです。
 さておき。
 武侠耐性、という言葉を今捏造しますが、そういうお話への耐性、お約束への親和性のない自分でも、この本は非常に楽しく読むことができました。なにこれ面白い。武侠あんまりどころかまるで知らないけど、オタと武侠とは意外でもなんでもなく親和性がある予感もひしと感じます。
 でも、そんなに武侠がオタに浸透しているとは思えない、いや全くしていない。なんで? もったいないよ。こんな面白い無茶世界を許容してくれるものなのに! って知らなかった自分がちょっとかじったからって訳知り顔してしまいます。しかし、これなら、この作品その世界を啓ける、端緒がつかめるのではないか、などと変な事を思うくらいに面白かったでありますよ。
 とか思ってたら、そういえば、『ノウェム』なんてあったなあ。と思い出し。それから更に無茶さが上がり、その上で説得力も上がったのが、この『ケルベロス』、とでも言えばいいのでしょうか。どっちも同じ古橋秀之作なのに、レベルの上がり方ダンチです。まだ昇るか古橋秀之。『ノウェム』の時は某サイバー武侠と比べておとなしいと思ったけど、『ケルベロス』ではかなりの位置まで漸近しているよなあ。あえて二度言うけどまだ昇るか古橋秀之