感想 せがわまさき 『十 忍法魔界転生』2巻

 大体の内容「魔人集う!」。魔人による魔人スカウトキャラバンは、この巻でひとまずの終結っぽい流れとなりました。まだ出てくる素地が残っているだけでまだなってない如雲斉が残っていますが、にしたって剣豪オールスターズっぷりが半端ありません。イン殺さんの「戦国時代から江戸時代初期を舞台にすれば自然とスターダムが湧いて出てくる伝奇小説のメソッド」というか、そもそもそういう伝奇小説のスターシステムをがっつり使った作品なので当然なんですけれども、それでも敵魔人側の伝奇スターぶりは尋常ではなく、荒木又右衛門から柳生但馬守宗矩までの豪華キャストが次々と魔人へ転生していく! というだけでその道の人のみならず、伝奇的な、あるいはチャン、バーラー的な物語に慣れ親しんだクラスタには堪えられないものがあるんだろうなあ。ちょっとかじりのにわかにでも、どんどんと魔人へと転生していく様を見ると、これどう考えても強すぎだろどうすんだよ! 収拾つかねえだろ! と思わせるんだから困ります。それだけ、こいつ強いんですよ!>それより更に強いんですよ!>それより更に強いんですよ! を高速で積み上げてたりする、初心者でも大丈夫!山田風太郎の小説だよ! というちゃんとそういうメソッドだけを頼りに、相手の知識に頼りきらない辺りはマジ山風先生のタツジン! であります。それをちゃんと見せ付ける漫画として立ち上げているせがわ先生もタツジン! となるかと思います。大体、二巻になっても主人公たる柳生十兵衛の不在で敵の積み上げばかり、でも楽しいというムチャクチャなもので、ある意味においては、信頼という物を勝ち取ったがゆえの大盤振る舞いでもありますが、にしたって一目くらい出てもですねー! 名前が宗矩の口から出た程度ってどんだけもったいつけるんですかー!? なんですか、女体がエロければ問題無いよねっ!! これ見てて待っててよ、ですか! 確かにそうだな! ←結局
 さておき、全然関係の無い話になりますが、先に「戦国時代から江戸時代初期を舞台にすれば自然とスターダムが湧いて出てくる伝奇小説のメソッド」という言葉を引かせていただきましたが、これについては自然にスターダムが沸いて出るというより、たぶんその頃の人物の話を江戸時代の文化でガチガチに語られたのが積み重なって積み重なって更にもう一つ積み重なって、それが脈々と明治大正昭和へと続いて、このおぼろ忍法帖に流れて言って結実した、というのが正しいような気がします。語られる者が積み重なって一つの橋頭堡として立ち上がり、それについて語ると自動的にその背後関係まで知られるようになり、ゆえにそれを使って更なる物を紡ぐことが出来ている、という事でしょうか。そして今の伝奇世界にも続いている、そういう文化の流れを感じたりします。ビバ、江戸時代! ビバはイタリア語で、江戸時代は日本語だ! ですがどうでもいいですね!
 とかなんとか。