バードマン セイラはもう一人で自在に飛べるのだ
以下ネタバレあり
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の作品は、どうもシリアス過ぎて苦手だったんだけど、
この『バードマン』は陰鬱で悪夢の様なテーマを、ブラックユーモアのコメディ映画として描いていて、
何だよイニャリトゥ、漸く語りたい内容に合った手法に気付いたんじゃん、やれば出来るじゃん!
(『バベル』は演出も演技も音楽も大仰過ぎて、感動出来なかった。
あの映画のテーマのひとつは、言葉が通じない=人間の善意が相手に伝わった時には悪意に変質してるというものだと思うんだけど、
それをシリアス一辺倒に描いても、それこそ伝わらないよなあ。
どうしようもない人間の愚行には、もう笑うしかない、コメディとして伝えるべきだし、
劇中での菊地凛子の行動なんてコメディ、ブラックユーモアそのものじゃん)
『バードマン』は、プロ、アマチュア問わず、芝居をやった、芝居に関わった人はより感情移入し易いものになっており、
「役者が急遽出られなくなった」「役者が云う事をきかない」「チケットが売れてない」「芝居小屋から閉め出された」「制作費が無い」といった
芝居やってると必ず直面する面倒な事をブラックユーモア交え自虐的に描いていて、
(勿論、《演劇》という装置を使っての“人生”についての映画なんだけど)
途中からは筒井康隆御大の短編小説を読んでいる様な気分で、
爆笑のメタ演劇映画でした。
(妄想が現実を侵食していくのも、実に筒井御大的展開)
でも日本の配給会社が「アカデミー賞独占の」「感動作」「衝撃作」なんて宣伝したもんだから、
劇場内殆ど笑いが起こらず、環境的には大いに不満。
外国人で一杯の劇場で、大笑いしながらもう一度観たいよ。
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