舟遊びの昼食

母親と一日デート。
ちょっとしたお気に入りの浜離宮庭園をのんびり歩いて、池に浮かぶ茶屋で冷たい抹茶をいただく。
そのまま銀座へ出て、好きな焼き物の店や甘いものを見てから、おのぼりさんの王国・六本木ヒルズへ向かう。海鮮丼でお昼ごはん。
上からは、夏なので丹沢あたりまでしか見えなかった。SMAP狂の母親はめざとく武道館を見つけて「今あそこに慎吾ちゃんが……」とのたまっていた。
ついでに、という感じで覗いた52階の「フィリップス・コレクション展」が思いのほかよく、むしろ俺ががっつり見入る。


The Luncheon of the Boating Party

あたりまえのことを思った。
名画といわれるものには、そういわれるだけのものがあるんだ、と。
「舟遊びの昼食」の、左の女の子――ルノワールの生涯の伴侶になったという女性の、帽子の花飾り。gif画像なんかじゃ逆立ちしたってわからないが、あの花。あれがすさまじい威力をもって目に焼きついて、印象派というのを一言にまとめるとこの帽子の花なんだ、なんて思った。すばらしい焦点、なんという美しい停止。
ほか、印象に残ったのは、距離によって色彩が鮮やかに変わるモネの「ヴェトゥイユへの道」、それからドーミエ*1の4作品。
ボナールの、「開けられた窓」も、意味ありげな人物の配置がなかなかよかった。有名な「棕櫚の木」じゃないほう。



母親は夕方の新幹線で帰っていった。

*1:ドーミエについて、以前小林秀雄で目にしたので覚えていた。ドーミエルイ・ナポレオンのころの風刺画家で、新聞によく洋ナシの絵を描いていた。ルイ・ナポレオンの顔が洋ナシに似ているという当時のフランス市民の感覚で、面白おかしく描いたのでドーミエは弾圧された。その裁判で、果たして王様は洋ナシに似ているか、それとも洋ナシが王様に似ているのか、という大弁論を大真面目にやったことから、小林は政治と風刺について筆をめぐらせている。