検索不得手な利用者から見ると、図書館OPACにも「もしかして?〜サジェスト機能」は欲しいです。
しずくラボの登場で、OPACの議論が高まっているようです。
が、一介の利用者の立場からすると*1、“Did you mean?(もしかして××ですか?)”機能がやはり欲しい、と
・公共図書館のOPACユーザの検索失敗例を分析した論考
http://current.ndl.go.jp/node/16184
の記事を拝見して感じました。
自分が図書室に勤めていた頃は、とにかく貸出至上主義の王道というか、利用者さんからとにかくお気軽にリクエストを出してもらうようにしていましたので、おおよそフツーのまともな図書館では突っ返され*2そうな、記載不十分なものをどんどん受け入れておりました。当然中には、タイトルしか書いていないものや“著者◎○の最新刊”など、無茶苦茶といっても過言ではないオーダーが次々寄せられ、これまた無茶苦茶な司書が当然のごとく処理している毎日でありました。
といっても、すべての予約・リクエストオーダーを一人でさばくわけではなく、ほとんどは派遣スタッフ職員の方々によって処理してもらいます。そして派遣さん(ちなみに全員司書資格なし・情報処理経験なし)の手に余るオーダーだけを自分が処理していました。
件数的には、毎月のオーダーが300〜500件くらいで、うち約1割が私のほうで処理しておりまして、そのうち半分は派遣さんの入力ミスによるもの。残り半分(すなわち全体の5%)には赤ペンで「訂正・補足」が入ります。自分でも意外なことですが、利用者さんにあれこれ訊ねたりもして、用紙が真っ赤になるほど直しを入れても、検索が失敗に終わることはほとんどありませんでした*3。
そうなると、次のポイントは派遣スタッフさんも含めてそれらの経験を共有すること、そして、その事例の積み重ねの中からパターンを分析して、解決能力を高めるため、検索困難・訂正・補足事例の収集をはじめることにしました。と、書くと大変立派な実践かと思われるでしょうが、まったくもって個人的な関心から趣味的にはじめたことですから、作業も勤務時間外に。もっとも短時間で済むことですからたいした負担にもならない。最初はとりあえずExcelに入力していましたが、初歩的なデータベース構築という個人としての勉強を兼ねて、Microsoft Office Accessへ変更しました。(最終的にはこのAccessへの変更が“悲劇”を生みます→後述)ちなみに入力項目はいろいろ試行錯誤をしてみたあげく、最終的には以下の項目を基本にしました。
・訂正等を行った記載事項の区分(書名・著者名・出版社名など)
・訂正内容の「誤」と「正」
・当該利用者の年齢(小中学生、高校生、一般、高齢者、の区分。実にイイカゲン)
・備考欄
約2年を過ぎてみれば、件数は200件を超えました。塵も積もればなんとやらといいますが、集めたところで所詮塵以上の何物でもありません。しかし、あれこれ眺めてみると気がつくことがありました。
- タイトルについての訂正が多い
- 中でも多いのは表記のまちがいである
- 小学生低学年の記載ちがいは読み言葉をそのまま記入
たとえば
(誤)(炎神戦隊)ゴーオンジァー →(正)ゴーオンジャー
- 表記の間違いで、一番多いのは漢字と送り仮名
たとえば
想い出≠思出
いわゆる表記のあやまりですが、なぜ多いのか、後の利用者との会話からいろいろわかってきました。
表記ちがいのリクエストをされた方は、当該資料を知るきっかけとなったのは会話・ラジオ*4などの非文字情報であり、それを自分勝手に文字に置き換える際に誤りが生じるようです。
で、さても驚くべきはやっぱり「amazon.com」。さきほどの利用者の誤記載内容を入力するとたいてい正解を含んだ検索結果を出してしまいます。反面、図書館OPACでヒットしたことは自館のN社はもとより、業界最大手のF社採用館でも全くありません。図書館人(当時)としては悔しくもありますが「amazon.com」の実力を痛感せざるをえません。そういえば、話は少し脱線しますが、「amazon.com」で“セカチュー”を入力すると、これまたちゃんと(?)往年のベストセラー↓
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レコメンドもそうですが、何事も「amazon.com」から学ばなくてはならないということ自体、シャクというか認めたくないものを感じますが、やはり集合知と一個人との関係について、あちら様(amazon.com)に各段の差はあります。
こうしている今日も、図書館カウンターで、お客さんのリクエストカードを不詳・不足を理由につき返す図書館員もいると思いますが、こうした少なくない「サディスト」職員と向い合わなければならない利用者のためにも、「サジェスト」機能付OPACの登場を望みたいところです。
蛇足ですが、一介の市民になってはじめて感じたのですが、OPACに対する態度は、ライブラリアンと市民ではずいぶん違うような気がします。
釣りで例えるなら、ライブラリアンは目標を一つに絞った一本釣りであって、鯛を釣ろうとしてサバが針にかかっても“外道”扱いです。
が、案外普通の市民・ユーザーは、サバが釣れれば、これ幸いにと美味しくいただく、実にサバサバしたものです。というよりも、そもそも我々素人はハナから一本釣りをしようとは思っておりません。トロール網で文字どおり一網打尽にしてしまい、網に入ったものから美味しそうなもの、珍しいものを並べかえ(ソート)より分けて(絞り込んで)好みの魚をいただく、というのが実情でしょう。
これは初期の図書館システム(検索項目が限定的・絞り込み不可・検索結果ソート不可)に対応してきたライブラリアンと、今日的Webサービス・サーチエンジン等に慣れ親しんでいる市民との、使用経験の差ともいえましょう。
同時に検索結果の優先順位・評価方法のちがい(ライブラリアンは書誌的事項との一致を、一般ユーザーは目的との一致を重視する)もあります。
このあたりの意識の差、十分考えない限り、「市民のOPAC」は実現しそうにもないと思ったりしますが…