NetFlix、5年内にDVDレンタルの落ち込みを予測、コアビジネスをネット配信に向ける?

TechCrunch(というかMichael Arrington)のNetFlix評はなかなかに一貫していない。貶して持ち上げまた落して持ち上げる、ってのを繰り返している感じ。
最近でいえば、Netflixが100ドルを切る価格で、映画の無料ストリーミングが可能なSTBの販売を開始した、という話題で(軽く)持ち上げている。ただ、無料といっても、そう感じられるのはNetflixに既に加入している人だけ。
これまでNetflixは、加入者に対して映画コンテンツをWebブラウザ上でストリーミング配信してきた。比較的高額サービス((月額16.99ドル以上のプラン))を対象にしているものの、追加料金は不要で利用できる。ある意味ではフィジカルなDVDで見たい!というほどじゃなくても*1、サクッと見れればいいなぁという人向けの付加的なサービスというところだろう。なお、現在では見れるコンテンツの数は約1万本とのこと。
個人的には、こうしたサービスは付加的なものであって、特にiTunesがレンタルを始めるにあたって、顧客の流出をさせないがための苦肉の策なのかなぁと思っていた。コアビジネスはオンラインDVDレンタルだしね。
で、上述したSTBってのは、こうした戦略の一環として、それまではWebブラウザ上でしか楽しめなかったストリーミングをTVに出力するというもの。おそらくカタログもこれまでストリーミング配信してきたコンテンツと同一のものなのだろう。ただ、こうしたオンラインビデオ配信の問題点は、これまでのところ、いかにしてテレビに出力するか、という点にあったわけで、たとえ提供されるサービスがPCではすでに利用できていたといっても、そのエクスペリエンスとしては大幅に異なる人も多いだろう。そういった意味で、このSTBの販売は大きな意義のあることだと思える。もちろん、現時点でその恩恵を受ける人が「非常に多い」とは言い難いのだろうが。
ただ、CNETの記事を読むと、私のNetFlix評は少し誤りがあるようだ。同社は現時点ではオンラインDVDレンタルをコアビジネスと考えてはいるのだろうが、将来的には、というかここ5年内にDVDレンタルはピークを迎えるだろうと予測している。つまり、落ち込みが始まるってこと。そう考えると、こうしたPC向けであれTV向けであれ映画のストリーミング配信は、将来に向けての投資という側面が大きいのだろうと思える。
また、同社はDVDレンタルが5年以内に峠を越すだろうと予測する一方で、DVDセールスは今後10年は安泰であろうと予測している。もちろん、オンライン配信が盛んにはなるのだろうが、レンタルではなく購入という選択を行う人々にとっては、オンラインでの購入はそれほど魅力的なオプションとはなりえない、ということだろう。
既存のDVDレンタル、DVD購入へのデマンドが連続的なものであると考えると、オンライン購入はDVDレンタルよりはコンテンツへの意欲が高く、DVD購入よりは意欲が低い、という微妙なポジションを取ることになる。継続して視聴できるという点ではDVDレンタルよりも好ましいが、DRMやメディアの永続性ということを考えると*2DVD購入よりは好ましくはない、という本当に微妙なところ。
やはりこうしたオンライン購入というのはiTunesを見てもお分かりのようにほとんど成功を収めていない。むしろ、可能性として注目されているのはオンラインレンタルのように思える。まぁ、DVDであれば期間が限定されていてもリッピングすればいつでも見れるようにはなるが*3、オンラインレンタルではそうはいない、ということもあり、DVDレンタルよりは自由度は低くなるだろうが、それでもその気軽さを考えると選択肢としてはアリって感じなのかなぁと思ってみたり。
ただ、そのオンラインレンタルの出力先がPCであるということが障壁となってきた部分もあって、それゆえにSTBによってその出力先をTVに向かわせたい、というところなんだろう。
ただ、そのオンラインレンタルも、コンテンツプロバイダの他社との独占的契約にる阻害、将来的な実質的な有料化、その価格設定など数多くのハードルも抱えているみたいだけど。でも、Netflixがネット配信を結構本気で目指している、ってのはなんだか象徴的だなぁ。

*1:このエントリを見ている人はNetflixを知っているだろうという前提で書いていますが、一応説明しておくとNetflixオンラインDVDレンタルサブスクリプションサービスです。

*2:DVDが永続的なメディアだというわけじゃないよ

*3:良し悪しは別として