『クレヨンしんちゃん オラの引越し物語 サボテン大襲撃』

その日、野原ひろしは職場で謎の果実を試食していた。これが何とも言えぬ絶品。特に蜜が!!
聞けば、この実はメキシコで発見された新種のサボテンから採れたとか。
「そんなわけだから、野原君、是非ともこの実を我が国にも!!現地に飛んで契約取って来て!!」と急な転勤話を告げられるのだった。

メキシコに行けば出世するが、子供たちの成長を見守ることが出来なくなる。

「家族はいつも一緒!!」
みさえは家族総出の引っ越しを提案する。

「とーちゃんについて来てくれるか?」
この問いにしんちゃんの出した答えが泣かせます。

かと言ってこの時、しんちゃんはまだこの引っ越しの重大さには気づいてはいませんでした。
野原家にお別れを告げに為に幼稚園の先生、園児、ななこお姉さん、おケイ、むさえ、埼玉紅さそり隊(台詞が無い!クソ!!)などなど、大挙して集まるシーンは前半部最大の見せ場と言っても過言ではない。
クレしんファンなら100回観ても飽きないぞ!!

あれ?
風間君がいない…。
とお思いのそこのあなた。安心して下さい。
このあと常に見栄を張るクールな彼が、熱い友情を見せつけてくれます!!

舞台をメキシコにある小さな町マダクエルヨバカに移して、いよいよ新生活が幕を開けるも、そこの町長は他国にサボテンの実を譲る気など毛頭なく、それどころか、はるばるやって来た野原家を毛嫌いし、ハイエナ呼ばわりする始末。
話し合いにすら持ち込めない。どうするよ。

ひろしが必死こいて営業している一方、町はこの新種のサボテンをたたえてドンチャン騒ぎ、祭りだ。
モンスターパニック映画が好きな方なら思わず「来た!!」とニタニタしてしまうのではないでしょうか?

前回の劇場版「逆襲のロボとーちゃん」が『ロボコップ』や『トータル・リコール』など暴力的なSF映画に敬意を払っていたのに対し、今回の劇場版はモンスターパニック映画(安めの)に敬意を払っていることは言うまでもない。(多分、『人類SOS!』と『トレマーズ』あたりが濃厚。)

で、話を戻すと祭りやイベントのような、一ヶ所に大勢集まれば、当然、人間(エサ)の臭いを嗅ぎつけ怪物はやって来る。
歓喜に満ちた笑い声が、一瞬にして山奥から響くサイレンの様な悲鳴へと変わり、祭りは血祭りに変わる。
それは古来より厳しく守り続けられてきた、モンスターパニック映画の掟なのだ。

みんな大好き『アリゲーター』の血祭り。
金持ちと幸せそうな奴は憎い!!みんな死ね!!(ワニの心の声)


サボテン怪獣・キラーサボテン

一見するとただのサボテンだが、騙されてはいけない。
群れをなして、車並みの速度で走り回る恐ろしい奴。
目は無いため、聴覚を頼りに獲物を探す。
頭部には、人間の丸飲みできる程の巨大な口がある。
切られても、砕かれても、瞬時に再生増殖する特殊能力まで備えている。
くどい様だが、実の中に詰まっている蜜は絶品。
こんな完全生命体に勝ち目はあるのか?

バカ正直にモンスターパニック映画の手順通りに物語は進行して行くけど、ただのコピーで終わらないところが、クレしんの良いところ。
先ず、生き残った面々が素晴らしい。


野原家、人命よりもサボテンの実を優先する町長、レスラー、近所の無職(多分、モデルはアントニオ・バンデラス)、スマホ中毒の小娘、そして巨乳(CV・坂本真綾)。
このいつ捕食されてもおかしくない助っ人を迎えて、血に飢えたサボテン怪獣軍団に大勝負をしかけるのだ。燃えるぜ!!

個人的にはレスラーがお気に入りですね。
体はデカいけどハートは某新世紀アニメの主人公よりも小さい。だから、彼は障害にぶつかる度に仮病を使って逃げ続けてきた。
そんな彼が仲間の為に立ち上がって、命を削るシーンは泣けるし、勇気ももらえる。
14歳の少年の「逃げちゃダメだ!!」よりも心に響く瞬間ですよ。
声を演じた堀内賢雄さんも最高です!!
GW中に観て!!