高舉・愛

《高舉・愛》
江若琳(エレイン・コン)、杜汶澤(チャップマン・トー) 
邱禮濤(ハーマン・ヤウ):監督


広東省の重量上げ選手・李麗(江若琳)は将来を嘱望されたいたが、試合中に倒れて糖尿病と診断される。コーチや医師の考えもあり、選手を引退することにした。その後香港へやってきた李麗は、引っ越し屋の手伝いや魚市場で働きながら生活していた。経営していたバーが倒産、ジュークボックスや酒、ソファーやモニターなど大荷物をかかえた石勇(杜汶澤)が彼女の隣に越してきた。
離婚し商売にも失敗して失意の石勇は、糖尿病のうえに選手引退という辛い思いを抱えながらも明るい李麗に心ひかれ、李麗も自分の境遇を知り気遣ってくれる石勇の思いを感じていた。その後2人は結婚し、李麗は妊娠。糖尿病患者の出産は大きな危険が伴うと言われるが、李麗は危険を乗り越え男児を出産した。家事に育児と日々の生活におわれながらも、重量上げへの夢をあきらめきれない李麗の心を知った石勇は、妻の夢を叶えてやろうと考えるのだった・・・。


実話に基づいた物語で、脚本には《等候董建華發落》《性工作者十日談》《我不賣身我賣子宮(崖っぷちの女たち)》でも邱禮濤と仕事をしている楊漪珊の名前がある。
小品だが、丁寧に作った印象で好感がもてる作品。この映画の為に江若琳はかなりの体重増、反対に杜汶澤は減量をしている。江若琳はデビュー作の《十七歳的夏天》(この時は名前が江玲)が評判よく、その後はそれほど目立って評価される作品はないが、今回の《高舉・愛》は彼女のこれまでの作品の中では一番の出来だと思う。杜汶澤も抑えに抑えての演技。この2人の組み合わせが思いの外しっくりおさまっている。
李麗の両親や兄妹などはまったく出てこないので不思議に思うと、途中で1度だけ「孤児だ」と話す場面があった。あと一つだけ疑問が残るのは、大陸の運動選手が引退後、香港へやってきて住み仕事をするということが簡単にできるのかということ。これについては劇中では特に言及されていなかったと思うのだが・・・。
それにしても、邱禮濤はごく素直に変な小細工もせず、何のてらいもなくするっとこういう作品を撮ってしまうところがすごい。
2人の住まいとして登場するのは石澳。歩いたことのあるところだった・・。
2012.3.25@GH旺角


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