[中学入試]

本日お集まりの皆様、合格おめでとうございます。
中学受験は、親子二人三脚と申します。短くも長い道矩、本当にお疲れ様でした。
本日この場に立たせて頂きましたのは、昨年息子が合格致しました時、自分の経験が役に立つなら体験談として話して欲しい。そして、私も約束をした以上、いつか果たさなければ、という思いからでございます。 少しでも、皆様のお役に立つ事が出来れば幸いです。

 さて、我が家は1つ違いの兄と息子の2人兄弟です。現在は、それぞれに寮のある中学に進学し、主人・主人の母・私、そして愛犬ラブラドールとの生活です。
函館ラ・サール中学校を目指すきっかけとなりましたのは、小学5年生の秋、漠然とではありますが、本人も受験しようと決めていた頃、偶然、学校説明会があることを知り、息子を誘いました。珍しく1つ返事。それから数週間後、ドキドキと会場に赴き最前列にてお話を聞き入る事になりました。ふと後ろを振り返れば、会場からあふれる人々。完全に息子は圧倒され、KO状態になりました。しかし、最後にフェルミン校長先生との力強い握手と、『待っていますよ、函館へいらっしゃい』とのお言葉に、その時から息子の函館ラ・サール中学校への思いは、一直線!となりました。
紆余曲折、無謀な挑戦ではございましたが、『絶対に受験は止めない!ラサールに入る!』と言い続け、前期入試の後、追加合格を頂くことになりました。最後までやり抜く、夢は絶対に諦めない!ということを初めて学んだ瞬間だったに違い有りません。

入寮・入学の準備が始まり、主人からは『ママがラ・サールに入学するんじゃないんだよっ』と指摘を受け、息子からは自分でやるから、と一言。ラ・サールに入りたいと決意した時から、既に自立は始まっていたのかもしれません。自分自身のことですから、今後は全てが自己責任となるわけです。実際、1年が経とうとしているわけですが、寮生番号や氏名を縫いつける以外、自分で自分の記名を注意しないと誰のものか解らなくなり、紛失し気が付かないという事もあると思います。どうしても、親が手を出してしまいがちですが、出来ればお子さま主導でこれからの準備を始める事が、今後の事もふまえましてお勧めなのではないかと感じました。
制服の採寸では、函館ラ・サールのブレザーに袖を通し、着替えをすませた息子はもう、立派な中学生に見えました。はにかみながらも、嬉しそうな姿に、私も胸が一杯になりました。時間はあっという間に過ぎ、入寮・入学式を迎え、合格したら一緒に行こう、と約束していたので、私はこの時初めて函館に赴きました。テキパキとこなす先輩方、チューターさんを先頭に寮内を案内して頂きました。

自習室、そして80人部屋。実に壮観であり、所狭しと子供と親がひしめき合っておりました。息子は、短時間の間にすっかりここの住人で在るかのように振るまい、私と、私の母だけが置いてけぼり状態に。何も心配ない!と安心し、翌日の入学式に臨みました。
静寂の中、流れる校歌・学生歌に感動を覚え、この日を迎えられた事を心から感謝致しました。既に友人も沢山でき、遠くからではありますが元気そうなその様子を見て、函館を後に致しました。帰りの機内では、函館上空を旋回し一望した景色に、止めどなく涙が溢れてしまったのは言うまでもありません。
中学生活を満喫し、学園祭に赴いた時の話です。いつどのような時にお会いしても、フェルミン校長先生は自らお声をかけて下さいます。学園祭にてお会いした時、息子の細かな普段の様子をお話下さり、それは各教科の成績にまで及びました。突然お声をお掛けしたのにも拘わらずの出来事に、私も驚かされました。
『中学生活を楽しむだけなら、誰にでも、どこでも出来ます。それだけではダメです。田村君の夢は何ですか?』
と私に尋ねられ、その夢に向かって無い事をご指摘になりました。加えて、『お母様は、手紙を書いていますか?』とも尋ねられました。子供を支えるのは、母親の愛情と家族の愛であるとご指摘頂きました。その後、お言葉の意味を深くかみ締め、週に1度は必ず手紙を出す事になりました。季節ごとに変わる便せんや封筒を駆使し、時には自分で便せんを加工することもございます。今まで気づかなかった思いや、私にとりましても勉強となり、多くの事に目を向けることになりました。
このように、生徒一人一人の個性に目を向け、私達にまでお気遣い下さる校長先生が外にいらっしゃるでしょうか?

また、先日このようなことが在りました。この冬休みの帰省前日のことです。
息子は成績不振から指名補習となり、1週間ほど長く学校に残りチケットの手配から最後の最後まで寮内に残ることになりました。
夕食は、中学生1人、数名の高校生達との夕食になったそうです。高校生も事情を察してか大人の対応をして頂き、勉強の事、将来の事を話してくれたそうです。
 『田村くん、将来何になりたいとか決まってる?』と聞かれ、息子は大きな夢があり進学したはずでしたが、その時、『さすがに夢が語れなかったよ。。。』とこの時の出来事を話してくれました。きっと、複雑な心境だったに違いありません。しかしながら、『頑張れよ』と温かくも力強い言葉に、真剣に考え、励まされたのも事実でございました。もし、親元にいればきっと毎日反抗期を迎えた息子と、日々大喧嘩の末、現実逃避という事もあったかもしれません。ですが、同級生同士だけではなく、学年を超えた、心からの交流があるのも寮生活の良いところではないでしょうか。先輩方も、中学校生活を経験し解っているからこそ分かち合えたことだと感じました。
確かに、『ファミリースピリット』は受け継がれているもの、と思います。
 
昨今、人間関係が希薄になり悲しい世の中に変わりつつあります。こういう時だからこそ人間力を磨かなければなりません。副校長先生がおっしゃる通り寮生活は、ストレスも不満もあると思います。ですが、社会に出れば更に不自由であり、深刻な問題が起きるのは必然です。
中学生からの寮生活とは、誰もが歩む道ではありません。ですが、ロバート・フロストの詩「選ばれざる道」にもありますように、誰もが踏みしめる道ではないからこそ困難も多く、乗り越えなければならない事も多いでしょう。それだけに、そこから導き出された経験は、何事にも負けないほどの勇気と、自信へと変わるものだと思います。
   
今、親として出来る事は何か。
それは、『信じること』『見守ること』なのではないかと感じています。小学生までは、子供の前から手を差し伸べ、共に歩いて参りましたが、お預け致しました今は、手探りではございますが、子供の成長を見守る事の重要性をひしひしと感じる毎日でございます。お互いの距離が冷静さを保ち、家族を思い息子を思います。
   
最後に、皆様がご健康に留意され、入寮式・入学式をお迎えになることを心から願い、再びお会いできる日を楽しみに、ご挨拶とかえさせて頂きます。
ご静聴ありがとうございました。