法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『タイムボカン24』第1話 クレオパトラはクレ夫とパトラという漫才コンビだった!

トキオという少年の前に、カブトムシ型の巨大ロボットが落ちてきた。操縦していたカレンという少女は、悪の組織アクダーマに追われている。
アクダーマの攻撃をさけるためにカレンはトキオをロボットに乗せて、未来世界へと帰還するが……


ヤッターマン』につづく、タツノコプロによるタイムボカンシリーズのリメイク作品。
タイムボカン24|読売テレビ
スタッフは、『聖剣使いの禁呪詠唱』の稲垣隆行監督に、『妖怪ウォッチ』『デュエル・マスターズ VSRF』の加藤陽一シリーズ構成。
最近の稲垣作品としては珍しく、全編を通して作画は素晴らしいものがあった。キャラクターは適度に艶めかしく、巨大感ある手描きメカがよく動く。現状のタツノコプロのことだから、全話を通して安定させるのは難しいだろうが。


そして物語だが、メインスタッフどちらもハイテンションかつハイスピードなギャグを得意とするだけあって、つめこんだ展開の早さは他に類を見ない。基本的には巻き込まれ型のプロットだが、前半であっさり組織のメンバーに加えられて出動してしまう。
それから未来の教科書会社が隠している本当の面白い歴史「真歴史」を確認しようと過去へ向かうわけだが……サブタイトルでわかるように、教科書に反映されていない最新学説をとりいれているわけでも、本当にそれらしい新解釈を構築するわけでもない。
ちょっと風景や衣装をエジプト風にしているだけで、まったく日本社会と変わらない夫婦漫才の人情喜劇を展開するだけ。エジプト社会なのにカタカナが堂々と使われたりもする。
本来のクレオパトラの解釈も、台詞で通りいっぺんなプロフィールを語るだけで、『忍たま乱太郎』のような強固な知識をあえて崩すような驚きも存在しない。


教科書を書きかえる「真歴史」という設定は、もっと破壊的なギャグにも社会派な風刺にも寄せられるはずだ。
たとえば、同時代はクレオパトラの容姿は必ずしも高評価されていないことから、女性の価値は容姿で決まるものではないとか、価値ある女性は容姿で評価されたと後世に憶測されたとか、ギャグに乗せてルッキズムを批判することだってできるだろう。
しかし実際に番組で示された「真歴史」は、予想よりも陳腐なダジャレにすぎず、少しも面白いと感じられなかった。タツノコプロのマンネリギャグは昔から笑えたことが滅多にないので、これはこれで正しいリメイクなのかもしれないが。


前期に『タイムトラベル少女〜マリ・ワカと8人の科学者たち〜』というTVアニメがあったのも、比較して評価が下がった一因。
タイムトラベル少女~マリ・ワカと8人の科学者たち~
教科書に掲載されるような華々しい科学の発明や発見の基礎に、ずっと地味だが必要な過程があったことを示し、地味ゆえに理解しやすいかたちで発見や発明そのものの興味深さを表現できていた。