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2009-06-24

わたしの『ほのほ』

(ポラン広場の宅配の情報誌『有機ぽふぁ』No.45に掲載された記事を編集したものです)


 私の助産院には自然なお産を求めて妊婦さんが来てくださいます。助産院のお産は「待つ」ことが主。スピードの速いことが良いことのように思われている現代で一番、大変なことです。中には、38時間、3日間、5日間、という時間をかけて生まれて来てくれる赤ちゃんもいます。一方、自分で危ないと判断した赤ちゃんはさっさと生まれて来ます。病院時代には信じられない光景ですが、時間の調整をされない赤ちゃんは皆、元気です。それでは、なぜ私が「待つ」ことにこだわるのか、お話ししたいと思います。



 私が助産婦になったきっかけは、飼っていた猫がお産をして半透明の膜に包まれた仔猫がゆっくりゆっくり見え始め「あっ!」と思った瞬間にポロンと生まれた、そのあまりにもキレイな様子にいのちの「ほのお」を感じ、「助産婦になろう、助産院を開こう!」と思いました。高校3年生の春、将来の道が見つからない私に「ほのお」が点った瞬間でもありました。

 助産婦になって11年間病院勤務をしましたが病院の出産は、「押せー、引けー、出せーっ!」と怒号が飛び交い、まるで戦場のようでした。一人の助産婦がどんなに理想を語っても組織に受け入れてもらえるはずはなく、助産婦と言う職業に絶望感を抱き、退職しました。

 その後、知人の紹介で児童虐待防止協会の相談員の仕事を2年ほどさせていただきました。虐待の現場は過酷でした。今でも、胸が詰まりそうになることがあります。この子どもたちは自分の意思を無視され続けています。新生児訪問・未熟児訪問の依頼もあり、いろいろなお母さんたちのお話を聞いているうちに気が付いたのです。陣痛促進剤によって、自然なお産なら必ずあるお休みもなく、ぎゅうぎゅう押し出されて生まれる赤ちゃんは、生まれた時から自分の意思を無視されています。そして、お母さん自身が本来持っている力も無視されています。お母さん自身が自分の意思や本来持っている力を尊重されていなければ、母になりきれずに子供もそのように扱ってしまう、そしてその子供が母になり、この負の連鎖を断ち切るために、「お産から変えなければ」と決意しました。


 私の心に再び「ほのお」が点りました。助産院開設に当たって助産院の名前を考えていたある日、源氏物語の句の中の「ほのほの如く君のことを思い…」を思い出し、源氏の君に恋い焦がれる女性の想いと助産院に対して温めて来た心の中の「ほのお」といのちの「ほのお」が重なり「ほのほ助産院」と命名しました。

 ここでお産をしてくださったお母さんたちの中に、いのちの「ほのほ」を感じ取り、多くの人に「いのちの力」を伝える活動をされている方々がいます*1。少しでも多くのお母さんたちがご自身と赤ちゃんの力に自信を持って、人と人とが大切に触れ合える社会になってほしいと考え、「待つ」お産に日々取り組んでいます。

プロフィール:中井かをり

2000年12月8日『ほのほ助産院』開設。産婆→助産婦助産師と名称変更されたが産婦を助けるのが第一の役割と考え、あえて「助産婦」と名乗っています。助産婦歴24年。夫、息子と3人家族。家族の支えが助産院を支えていると考えています。