MOON OVER MANIFEST (152日目くらいで終了)

Moon Over Manifest


かなりのんびり読んでいたムーンオーバーマニフェストもとうとう読み終わる。
ありがとうオーディオブック。あなたの助けがなければ読み切るのはさらに困難だったでしょう。(代償:4200円)
流石に4回もオーディオブックを聴けば細かい所にもいろいろ気づきますね。喋ってる登場人物が悲しかったら悲しい声で、驚いたら驚いた声でちゃんと演じてくれるんですが、ラストの感動的な場面でキャラの泣き演技じゃなくて素で感動して泣いてるんじゃないかと思われる箇所があったりとか。気持ちは分かります。私もグッと来た。
さてようやくですが、本編の内容が今回でだいぶ理解できましたのでお話を紹介できるようになりました。洋書はネタバレ気にして(あえてバラす方向で)いくよ〜。
お話の始まりは一人の女の子が1936年の田舎の町、マニフェスト行きの汽車から途中で飛び降りる場面からです。彼女の名前はAbilene(アヴリン)。12歳。今までここといった故郷も持たず、父親と一緒に各地で仕事をしながら暮らしていました。彼女は今年の夏休みの間、父が昔暮らしていたというマニフェストで、父の古い知り合いのお世話になることになっています。今まで片時も離れたことはなかったのに何故突然父は自分をこの町に送ることにしたのか、アヴリンは父親の不可解な態度に若干不満げです。最近足を怪我した時に運悪く感染症で危ない状態になったせいだろうか、自分の事を足手纏いに感じたのだろうかと、良くない考えをしてしまいがちです。
マニフェストでは教会を営むShady(シェイディ)さんが温かく迎えてくれました。どこか影のあるおじさんですが、昔に父もシェイディさんと一緒に暮らしていた時期があったそうです。あまり昔の父を知らないため、違った一面が見れて新鮮な驚きもあります。そして用意してもらった部屋で、忘れ去られたように隠されていた箱を偶然見つけます。中にはルアーやコルク、人形など、誰かの子供じみた思い出の品々らしきものが入っていました。そして中にはもう一つ、今から18年も前にNed(ネッド)という人物が友人のJinx(ジンクス)へ宛てた古びた手紙も見つけました。友達を懐かしむ内容に紛れて、この町にはスパイがいるから気を付けろと注意を促す一言がふと目に留まります。18年前はちょうど戦争の最中。これって本物のスパイの事を言ってる手紙じゃない?退屈だと思っていた田舎の町で心惹かれるミステリーに出会うのでした。
それからは主に、かつて存在したスパイの正体を探る話になります。町の新聞社のおばさんと親しくなって自由に昔の記事を見せてもらえるようになったり、新しく出来た友達に協力してもらってこの小さな町の人々をあれこれ探ったりです。でも一番核心に迫れるものは、町の年老いた占い師が語る昔話です。アヴリンがこの占い師の植木鉢を割ったせいでしばらくただ働きしていると、片手間にネッドとジンクス、二人の少年の物語を不思議な事にぽつりぽつりと話し始めるのです。しかも偶然見つけた箱の中身の、数々の思い出の品が話の所々で登場するのです。この占い師マジモンか!?と若干ビビるアヴリン。
18年前に暮らしていたネッドとジンクスという少年。二人は親友と言っていい間柄で、度々町を騒がせながらも人々から温かく受け入れられていました。ジンクスは最近やってきた余所者ながら、働く悪知恵で戦時中に起こった町の様々な困難を解決する糸口を与え、町の有名人になります。実はこのジンクスは、名前が違うけど昔の父親だとやがて判明します。そしてジンクスに手紙を残したネッドは、戦争中に命を落としていることも。アヴリンはこの町で父は大切なものを見つけて、そしてなくした事を知るのです。
父は自分の事をジンクス(Jinx:動詞、不運をもたらす)な人間だと幼少期のトラウマから考えている節があり、アヴリンは父が自分をここに一時的にではなくずっと残すつもりで送り出したのではないかと、その真意にやがて気付くことになります。12歳の女の子にいつまでも路上生活させてはいけないという想いと、一時的に娘が感染症で命の危険に陥ったとき、自分はやはり周りに不運をもたらしてしまう人間なんだと忘れかけていた事を思い出してしまったためです。そして今も昔も放浪生活をしている自分が、唯一大切な場所だったと思えたマニフェストへ娘を送ったのでした。
やがて約束の夏休みの期間も終わり、アヴリンはマニフェストの駅に向かいます。最後に駅でアヴリンに待ち受けるものとは、町の人々と父の思い出を知りアヴリンが決めたこととは何か、…そればっかしはさすがにバラすことは出来ないんだよなぁ〜!!
スパイの正体に、小さな町の個性豊かな人々の歴史に、謎と過ぎ去った思い出の輝きにとマニフェストの様々な局面が描かれ、実質4回読んだ私ですがその面白さは褪せることはありませんでした。めっちゃ疲れたけど! 正直な事を言いますと、実はまだわからなくて有耶無耶のまま飛ばしてしまった文章がありますので、もう一回しっかり読んでみたいと思っていたりします。めっちゃ疲れるけどな!
かつて父親が暮らしていた町で娘は父親の足跡を探り、やがて不器用な父親の深い愛情を知ることになるのです。悲しくなくて出る涙っていうのはもう耐えようがないよね。オーディオブックの読み手の人と一緒に、じんわり涙を滲ませていたワタクシでございました。