包括条項の表現

一般的にはバスケットクローズと言われる包括条項の表現として、「その他……」と規定する場合と「前各号に掲げる(定める)もののほか……」と規定する場合がある。
法令の規定例を見ると、厳密な使い分けはされていないようである。例えば、次の金融商品取引法の規定は、ともに平成22年法律第32号による改正後の規定であるが、なぜか表現が異なっている。

(免許の申請)
第156条の20の3 (略)
2 前項の免許申請書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。
(1)〜(6) (略)
(7) 前各号に掲げるもののほか、内閣府令で定める書類
3 (略)
(業務方法書)
第156条の20の6 (略)
2 業務方法書には、次に掲げる事項を定めなければならない。
(1)〜(5) (略)
(6) その他内閣府令で定める事項

また、地域再生法の制定当時の規定に次のような例がある。

地域再生計画の認定)
第5条 (略)
2 地域再生計画には、次に掲げる事項を記載するものとする。
(1)〜(4) (略)
(5) その他内閣府令で定める事項
(6) 前各号に掲げるもののほか、地域再生計画の実施に関し当該地方公共団体が必要と認める事項
3〜7 (略)

第5条第2項は、第5号が「その他」、第6号が「前各号に掲げるもののほか」と使い分けているが、これは表現が重なるのを避けたのであろう。
もちろん、どちらかの表現に統一してもよいのであるが、使い分けをしようとするのであれば、次の沖縄振興特別措置法が参考になる。

(沖縄振興基本方針)
第3条の2  (略)
2  基本方針は、次に掲げる事項について定めるものとする。
(1)〜(12) (略)
(13) 前各号に掲げるもののほか、沖縄の振興に関する基本的な事項
3〜6 (略)
(沖縄振興交付金事業計画の作成)
第105条の2  (略)
2 (略)
3  沖縄振興交付金事業計画には、前項各号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を記載するよう努めるものとする。
(1) (略)
(2) その他内閣府令で定める事項
4〜 7 (略)

第3条の2第2項第13号は「前各号に定めるもののほか、沖縄の振興に関する基本的な事項」としているが、第1号から第12号までについても沖縄の振興に関する基本的な事項であり、それ以外のものということをきちんと表現したものとなっている。
これに対し、第105条の2第3項第2号は「その他内閣府令で定める事項」としているが、内閣府令で定める事項という言葉自体特別な意味はないので、簡素に「その他」としているのではないだろうか。