「付」と「附」の使い分け

「付」と「附」の使い分けについて、法制執務研究会『新訂ワークブック法制執務』(P602)は、次のように記載している。

……同音異字の漢字の用法の問題がある。その典型的なものとして、「付」と「附」がある。その原義としては、「付」が「わたす」・「あたえる」・「さずける」の意、「附」が「つける」の意とされているが、「文部省 用字用語例」(昭和48年9月)によれば、「附」の具体的使用例としては、「附則」・「附属」・「附帯」・「附置」・「寄附」が、「付」のそれとしては、「付記」・「付随」・「付与」・「付録」・「交付」・「給付」がそれぞれ掲げられており、これから見る限り、「附」を用いることに制限的な方針がとられているようにもうかがわれる。

この使い分けの方針については、氏原基余司「当用漢字改定音訓表(3)」『時の法令(NO.1955)』(P65)によると、昭和36年3月に第5期国語審議会の第2部会がまとめた「語形の『ゆれ』について」という報告のうち、第1部の「漢字表記の『ゆれ』について」に次のような記述があるとのことである。

「付属」と「附属」―「附」「付」は古くから通じて使われている。「付」は字画が少ないので、今日では、「付属」を採ることが望ましい。同じように、これまで「附」と「付」とを使い分けてきた、「附加」「附記」「附近」「附言」「附則」「附随」「附帯」「附託」「附着」「附録」「寄附」「添附」「附する」「付与」「付議」「下付」「交付」「付する」なども、すべて「付」の字でさしつかえないであろう。これは当用漢字表選定の際の方針でもあったが、同表には日本国憲法に使われている字として「附」をも採っている。

つまり、当用漢字表の選定方針では、当初「附」は採用しないはずであったが、日本国憲法に用いられている漢字は全て採用するという方針もあったため、憲法に用いられている「附」も当用漢字表に入ったということであり、従来の使い分けの基準により使い分けがなされているということである。
ところで、自治体によっては、「附則」とせずに「付則」とするなど、「附」は使用していないと思われる自治体も存する。このような割り切りも一つの考え方であろうが、とりあえず国の用法にならうのであれば、「附」は、上記の文部省用字用語例で挙げられている5つの用語に限って用いるのだということになるのだろう。