石川淳「霊薬十二神丹」
助次郎はたわいない口論から蹴たおされ、一刀により肝腎なものをすぽりと切りおとされた。神医につかえてきた弟は、つちかった秘術を兄のために使った。天地の霊をこめた丸薬を用いることで、かのものは元の位置にもどったのである。だが、様子のことなるところがあった。平素の様子のあわれさと、事が生じたときの巨大さである。ちなみにその薬の名は、十二神丹。
- 作者: 石川淳
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1991/07
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 19回
- この商品を含むブログ (9件) を見る
吉行淳之介「不意の出来事」
彼にバレちゃったの――。三十才のヤクザであり、雪子の足裏に煙草の火を押付ける男に、私のことが気づかれたという。私が与える快感とともに刻まれる眉間の皺が証拠となって、彼にバレちゃったというのである。そして、私に会いに「彼」が来るという。私は待った。その間に、空想はさまざまな形に広がっていき、私は苛立ち、そして怯える。会社の机に坐り、私は男を待ち続ける。
- 作者: 吉行淳之介
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1966/11/14
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 13回
- この商品を含むブログ (17件) を見る
『(略)・・・
小猫はねむった
とてもすてきな
寝床と思った。
だが困ったよ。
近眼の男が
知らずに帽子を
ひょいとかぶった』
心に残る物語 日本文学秀作選 魂がふるえるとき (文春文庫)
- 作者: 宮本輝
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2004/12/07
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 31回
- この商品を含むブログ (21件) を見る