市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

「Myちくさ21」主催「市政出前トーク」

 「Myちくさ21」主催の地域委員会に関わる「市政出前トーク」を見させて頂きました。凄いね。凄いです。

 名古屋市総務局地域委員会制度準備担当部主幹 澤博さんに加え、大藪主査といわれる方も参加して2名体制で説明されていました。資料は「地域委員会制度の本格実施に向けた検討について―検証結果と制度設計の基本的な考え方―」の詳細版をベースに説明が展開されたわけですけど。・・・まあ、突っ込む突っ込む。そして、その突っ込みの適切な事。正直言って、私の指摘なんぞ甘いと思い知らされましたね。実際に、私に対してもそのような指摘はありました。「『Myちくさ21』内で地域委員会の議論が重ねられており、私の指摘はそれを踏まえていない」「市長の政策の評価は関係なく、地域に対して地域委員会という制度が提示されているので、その評価を論点としたい」といったところでしょうか。
 まったくその通り。
 こういったご指摘に見るように、非常にこの会はレベルが高い。はっきり行って、青年の主張になりかねない減税日本ゴヤの市議よりは論点整理を踏まえた、非常にハイレベルな議論が展開されていました。
 
 発言から幾つかメモを引かせてもらうと。

・今回のモデル実施における地域委員会の財源は政策的な支出であったが、今後全市展開する際に、どのような手当てを想定されているのか。
・実際に地域委員会に委員として参加してみると、すでにレールが敷かれている。提案しても様々な理由から認められなかった。何か物を作ろうという時にも、こういった物を作りたいと提案しても無駄で、こういった物がありますという予め決められた物件の中から選択し、せいぜい色を何色にするかという程度しか決定権が無い。委員をやっていてもだんだんとモチベーションが下がってゆく。
・地域委員会では既存の地域活動を前提として議論がなされていた。そもそも提案をしようとすると、学区連協の段階で「時期尚早」との意見が出されて議題にもならなかった。
・区政協力委員は市側の人間ではないのか。それが地域委員会と言って地域の住民の代表のように決定をするというのは本当の住民自治とは言えないのではないか。住民自治というのであれば行政の枠組みから外れた意見も受け止めなくてはならないだろう。
・265学区の中、立候補が14学区という事はたったの3%でしかない。募集をした結果、最低でも30%程度の学区が手を上げるぐらい周知させないと、モデル実施にもならない。
・今回のモデル実施では、「比較的スムーズな意思決定からの実施への移行が図られた」とこの報告書では語られているけれども、そのような地域だけを選って実施したのは明白。モデル実施というからには、本来、もっと問題が起きるような地域も選ばれて、そこで発生した問題を課題としなければ意味が無い。
・予算についての話が先行していた。まるで予算を消化する為の議論のようであった。(後述するスケジュール的な問題とも関連します)
・予算消化よりも、地域振興のために如何するのかといった、予算とは無関係の議論も議題にしたかった。今後は予算ゼロ、つまり地域に予算は要らないといった地域委員会の在り方も考えられるか。
・地域委員の選挙について、投票率が低い、注目が低いというが、今後、委員への投票をする際に、委員立候補者の情報は住民にどのように開示されるのか。
投票権について、18歳以上の日本国籍を有するものとの事であったが、在勤者、在校者等に広げる可能性は無いか。
・時間的、空間的制限を越えたい。単年度予算ではなくて、地域の課題によっては、複数年にわたる施策が必要な場合もある、また、山崎川の清掃に見るように、一学区だけでなく流域全体で対応したい課題もある。

 等々ですかね。聞き漏らした部分もありましたし、細かなニュアンスは全然違うかもしれません。しかし、すばらしい。やはり、地元にあって、直接問題に触れていらっしゃる方が多いだけあって、発言が地に付いている印象を持ちました。
 その他に、3月に実施地区を決定し、選挙もし、6月の補正予算で地域委員会で決定した予算を上程する為には、選出された地域委員会で2ヶ月程度、5月の連休前までに22年分の予算を決定しなければならなかったという話も出ました。しかし、これって完全に話が転倒していて。河村市長が無理やり4年の内に地域委員会を全市実施させる為に大急ぎで22年中の予算実現を求めただけで、地域にも当局にも得るところは無かったのではと思えます。

 検証作業でも、こういった問題は取り上げられるべきではと思います。冷静に考えれば、22年度は諦めて、そのまま議論を煮詰めていって23年度の実施で充分だったのではと思えます。


 自分が時間を戴いて(3分間)語った事は、次の4ステップでした。語りきれなかった事を含めて補完してここに記載しておきます。また、現場で戴いたこの意見に対する批判はすでに上に書いたとおりです。

1.そもそも、地域委員会は平成の大合併で吸収された地域の自治をギリギリ守る為の方策で、名古屋のような大都市の地域にはそぐわない。
 また、このブログでは「東海社会学会第4回門前の小僧レポート」で触れたように。「地域自治というのは、地域に決定を任せるという反面、行政が地域から手を引くという意味でもある」行政の撤退を許すのか、行政を補完強化するべきか。そもそものその議論が無い。※1

2.また、モデル実施においても急ぎすぎた。ここには、地域の事情とか、健全な制度設計という判断よりも、河村市長の任期4年以内に全市実施という不健全な政治的意図があったからではないか。

3.地域委員会の議論、予算の配分を聞いていても「切実性」がない。地域委員会とは上でも述べたように行政の地域からの撤退を意味する。実際にこの報告書でも全市実施の場合は、委員の選出選挙から地域が主体で行うように提言している。全市で一斉に地域委員会の選挙が行われれば、市も区も一々の地域委員会にフォローの要員は裂けない。しかし、地域委員会の委員選挙を主催するという事が可能な地域がどれほどあるのだろうか。
 更に、現在は政策的予算から財源が取られているために、お祭りとか防災、防犯といった、行政の上にプラスする施策が議題になるが。今後、老人介護であるとか、独居老人対策、子育て支援などの課題が地域に与えられた場合、今のような地域委員会の体制で果たして耐えられるのか?

4.現在は区政協力委員であるとか、学区連絡協議会の構成員が地域委員会の委員となる。また、この両者は重なる部分もある。つまりここにおいてすでに地域の担い手は少ないといえる。ところで、地域委員会の委員は2年で任期を終え、再選はしない事となっているが、地域によっては、何回の再選(つまり、何年)でこの担い手が居なくなるだろうか。
 この制度では継続可能性が無くはないか?ここにも4年間だけできればいいという市長の意思を感じるがどうだろうか。

 さてさて、と、非常に有意義で高度。そして具体的で地に足の付いた議論に参加させていただいた。こういった方々の中に居ると、こちらも何か引き上げられるような気がして非常にうれしい(まあ、幻想なんですけど)
 ところで、この場に幾人かの市議の方々が参加していらした。しかし、減税日本ゴヤの市議の方たちが一人も参加していないのは、どういう事だと、おっしゃっていた方もおみえでした。私もそう思います。


※1 本当は、ここが一番大切になると思う。「何故、地域委員会が必要か」に対して答えが出せなければ、「地域委員会とは何か」に答えられるわけが無い。そして、この「何故」の設問の先に「粗野な自由主義」というキーワードを発見することができれば、河村市長の提唱する「地域委員会」の問題も明確になってくる。更に、「減税」も「議員報酬」の課題も。全ての矛盾がここにある事がわかる。