「台風の日」「森山中教習所」/真造圭伍

台風の日―真造圭伍短編集 (ビッグコミックス)

台風の日―真造圭伍短編集 (ビッグコミックス)

「台風の日」は2008年〜2012年までの作品が収録されている短編集。そのせいか、かなり絵柄にばらつきがあるんだけど、初期の絵柄をみて、すぎむらしんいちさんが好きなのかなー、とかちょっと想像できたりしたのはよかったです。「台風の日」の中では、表題作がいちばんぐっときました。サマージャムをちょっと口ずさんじゃう感じとかも。
ただ、やはり1冊通してみたときのまとまりはないので(どっちかというとお蔵出しという雰囲気)、真造圭伍さんという漫画家に興味をもって最初に読むのは、この短編集じゃ無い方がいいかなとも思います。などともやもやしていたところに、デビュー作である「森山中教習所」をおすすめしていただいたのでした。
森山中教習所 (ビッグコミックス)

森山中教習所 (ビッグコミックス)

森山中教習所」を読むと、この作者さん独特の、物語の場所というものが見えてくるには、ある程度長さのある作品の方がいいのかもなと感じました。
いろんなことに興味のない飄々とした主人公と、その周りにいる人々、すべてに少し距離をおいて眺めている感じが映像っぽい。ところどころ、セリフのない大ゴマが挿入されるんだけど、それも例えば背景に音楽が流れて登場人物たちの心情を描写するシーンのようで印象的でした。
あと影の使い方も好きな作家さんで、いい夏休み漫画だなと思いました。

帯を見るとすごく期待されてる感が伝わってきすぎる気もするのですが、今後がとても楽しみです。

 最強のふたり


先週、仕事帰りに見に行きました。
事故で首から下が麻痺してしまい不自由な生活を送っている大富豪フィリップが、自分の介護人募集の面接に訪れた不躾な青年ドリスを気に入って採用し、彼らが相棒になっていくという実話をもとにした物語。
とにかく率直なドリスのキャラクターがとてもよくて、重苦しくなりがちなシーンも、不謹慎になってしまいそうな振る舞いも、明るい笑いに変えていたように思う。キャラクターの配置だけでいけば、いくつか似たような設定の物語も思い浮かぶのだけど、そのどれとも異なる物語として印象に残るのは、このドリスというキャラクターのおかげじゃないでしょうか。
ドリスの提案で、フィリップが車椅子を新調する場面はすごくよかったな。

ひとつ、個人的に残念だった点をあげるとするなら、出会いの場面で音楽の話をして、音楽を通してお互いを知るというような場面もあって、オープニングの大事な場面でも一緒に歌を歌う場面もある、っていうことで、彼らにとって音楽がすごく大事なんだろうなということが伺えるのに、肝心のラストシーンにはそれが絡まない、ということでしょうか。まあこれは自分の期待が先走ってしまっただけだとも思う。フィリップがあれこれリクエストした曲を聴きながらドリスが連想ゲームするシーンはたくさん笑いました。
あと執事的な役割を担ってるイヴォンヌのスタイルがやたらいいのに釘付けになりました。