『今どき、女中で奉公って!?』(葛西メイダイ)

今どき、女中で奉公って!? (電撃文庫)

今どき、女中で奉公って!? (電撃文庫)

イマドキ借金の形に(!)お女中さんとしてタダ働きさせられるお嬢さんが主人公。
時は現代舞台は旧家、何やら訳ありの三兄弟にどうもいわくありげなお家の事情、オプションに双子の姉妹もついてきます……となれば、祟りと呪いが乱れ飛び、骨肉相食む愛憎の連続惨殺事件家政婦は見た!、くらいを期待してしまうわけですが、もちろんそんなことはなかった。
……え?誰もそんなこと期待してない?
そうですか……


いや、本当に設定上はガチガチにやってしまえば、それこそぶらっと訪れた野暮ったい探偵さんでも組み込んでしまって、MW文庫で出しておしまいなさいよ、くらいのことは出来たと思います。
そこをマイルドにいい話に落とし込んでいる辺りで、好みは分かれるのかなあ、これは。
それでもわりとごたごたはあるお話でもあります。
旧家ってやっぱりそういうイメージよね……


わりとさらっと読ませてくれつつも、現代っ子たる早苗の感覚と周囲のギャップやら、思わせぶりな諸処のアイテムから、これは終盤ちゃぶ台ひっくり返すんじゃないか、と思わせてくれたりします。
あっちかそっちか、どっちに行くんだとどきどきしてたのもホントのところ。
が、なんというか、非常に現実的な着地点に降り立ってみたりする辺りも、どこか愛嬌のあるテイスト。


たぶん、やっぱり期待していたのとは違うのだけれど、これが悪くないというかいいじゃんというか、妙に安心出来てしまったり、なんだかちょっと風変わりな魅力。
この先、どういうものをどういうふうに描いてみせてくれるのか、いろいろと楽しみな気がします。


……でもこれ、正直どの辺の層を狙ってるのか分からない。
二冊目(or 二作目)ちゃんと出るかな……一発屋さんにしてしまうのは絶対に惜しいのだけれど……