「若者論」を疑えを読んだ

どう経緯か覚えていないのだけど、作者の方のブログを見る機会があって、
怒っている人だなぁと思った記憶がある。
そのときにはこの新書も出ていて、読んでみようかなぁと思ったのです。

内容

問題意識としては、社会学者の本田由紀さんとの対談の最初で出てくるのですが、

若者を語る視点として、「かつての日本ではありえなかったこと、俺たちが若い頃には考えられなかった問題が起こるのは、今の若者が頑張っていないだけ・心が弱くなっただけじゃないか」というのが支配的になっているように見えるんです。(p18)

という世間の見え方がある。
この支配的な見え方の多くが科学的な根拠なきものであることに対して怒っているようです。
で、そのための解決方法が「もぐら叩き」。
「若者論」でおかしなものをデータを使ってひとつずつ反論する。
それをテーマごとにやっていくという本

感想

最初に驚いたのは筆者の経歴。歳がひとつしか違わない…。
で、文献の量も多いし、すごいなぁというのが読み始める前の印象。


ただ、読み進めていくと序盤に出てくるこの話がひっかかってくる。
それは、

本田:では、後藤さん自身のオリジナリティってなんなのでしょうね。すでにいろんな論者が指摘していることを、より細かく、言説に即して検証することでしょうか?
後藤:オリジナリティではないかもしれないですけど、スタイルではあると思います。(P24)

この本を読んでいても、「この人のこの研究はおかしい。なぜなら、こうだ!」
ということが繰り返し出てくるけど、じゃあ結局なんなの?と思う。
で、そんな簡単に決め付けることは出来ないみたいな論調で終わってしまう。
ニートの問題なんかでもそれが貫かれているのを見ると潔さを感じる面もあるけど、
だとすると、論文としては不十分だと思うし、本にすることなのか?とも思う。


ただ、読んでいて僕が思った怒りの場所は違っていて、
こういった正しい根拠のない説を書いた本を簡単に出してしまう出版社と、
何か事件が起こるとそういった本を出している人にコメントを求めるテレビだった。
出版社はもっと編集の人がしっかりしないとダメだと思う。
若者論を語る本を作るときに、こういったデータが足りないというものに関しては
かなりの言及がある。(まとめていないので、何パターンかわからないが)
と考えると、この本のターゲットは出版社の編集の人なのかな?とも思う。
こういったことがすぐに言われてしまうような本を大量生産しているようじゃ、
クオリティも低いのだろうし、そりゃ本離れも起きるよと思う。


とりあえず、「若者」に片足つっこんでる自分が読む本ではなく、
今どきの若者はって言うような年齢の人が読む本なのは間違いない。
この本を読んでなお、今どきの〜とかいう人は気にしなければいいと思う。