パラマウントベッドのマーケティング戦略について考えてみる。

パラマウントベッドがリリースしているiPhoneアプリ、「smart sleep」に関する記事が出ていたので
それについてちょっと考えてみたいと思います。


そもそも「smart sleep」とはどんなアプリなのかというと、

就寝時間を設定すると、最適な食事時間を通知してくれたり、毎日の睡眠履歴を記録したりする。キャスタリアのチーフアカデミア・松村太郎さんによると、近年携帯電話を目覚ましに利用する人が多くなっているそう。「smart sleep」アプリでも、起床時にはiPodのお気に入り曲をアラームとしてセットすることができる。さらにミニブログTwitterツイッター)」とも連動しており、ハッシュタグ「#smartsleep」を利用すると、世界中の睡眠に関する「つぶやき」を共有できるという。
http://www.j-cast.com/mono/2009/11/27054941.html

僕がフォローしている方でも既にハッシュタグの「#smartsleep」使っている方がいますねー。
現状の機能としては
・自分の好きな曲をアラームに設定できる
iPhone以外のユーザーには理解されにくい機能ですが、iPhoneはこの機能がデフォルトでついていないんですよ…)
・睡眠履歴の記録
twitterとの連動
といった感じでしょうか。
App StoreiPhoneアプリ販売所)のレビューを読むとアラームが爆音で鳴るので困るという不満がかなり多いので使うのが躊躇われるのですが。

パラマウントベッドはなんでこれをリリースしたの??

そもそもの疑問として、なんでこのアプリを開発してリリースしたの?というのがあります。
パラマウントベッドと言えば、僕個人的なイメージでは介護のイメージが強いのですが、
近年は新しい試みも行っているようで、

また近年は、当社の総合力や強みを活かせるものとして、いくつかの新規事業に取り組んでおります。すなわちベッド等の保守点検とクリーニングを一体的に提供するというサービス事業や、「上質な眠りと健康」をテーマとする新ブランド「INTIME(インタイム)」の立ち上げであります。さらには、病院用ベッドの海外市場の開拓にも力を入れております。
http://www.paramount.co.jp/corporate/president.html

上に見るように新ブランドも立ち上げているみたいで、
そもそも「smart sleep」という名前自体も睡眠研究から生まれた新しいコンセプトということでアプリありきのブランドじゃないんですね。
昨日iPhoneアプリの「smart sleep」のイベントがあったようでそれに関するcnetの記事によると、

パラマウントベッド執行役員コンシューマ事業部長の大石研治は、5人に1人が不眠といわれている現代は「睡眠難の時代」と話す。パラマウントベッドでは、日本人にあったマットレスなど開発して「寝心地マーケティング」をしているが、寝具だけでできることは限られており、「寝心地は良質な睡眠の単なる1要素に過ぎない」と語る。

 そこで、寝具だけでなく食事や運動など生活習慣などにも視野を広げていき、よりよい睡眠を通じて「日中のクオリティとパフォーマンスの向上」のためのソリューションを提供する方針だ。そのソリューションの1つがiPhoneアプリというわけだ。
http://japan.cnet.com/news/tech/story/0,2000056025,20404390,00.htm

このブランドを使って、ベッド屋さんからもう少し視点を広げて、良い睡眠を構成する様々な要素まで入っていこうという考えみたいですね。


http://japan.cnet.com/image/l/story_media/20404390/smart04.jpg

■その他のメーカーってどんな感じなの?

確かに、ベッドなんてこれだけ普及すれば爆発的に市場が拡大することもないだろうし、
介護分野で拡大していくって道はあるだろうけどパラマウントベットはその分野でもかなりシェア握っているだろうし難しいのだろうなぁ。
その他のメーカーはどんな感じで方向性を打ち出しているのかちょっと調べてみた。
まずフランスベッド。企業情報から一部引用すると、

フランスベッドでも、生活用品を「使用」する新しいライフスタイルと価値観を持つ方のために、リサイクル事業に取り組んでいきます。

ベッド、インテリア、福祉用具などのレンタルサービス、中古販売、回収再生の事業をすすめて皆様のニーズに応えるとともに、環境面からも、廃棄物の発生量を抑え、資源を有効活用します。今後もフランスベッドならではのリサイクル事業を積極的に展開し、新たな市場を創造し、豊かな社会づくりに貢献します。
http://www.francebed.co.jp/company.html

調べてみたらちょっと予想外の方向でびっくり。
企業情報の最初に出てくるのがまさかリサイクルとは。
認知されていくと面白そうな気がしますが、これ世の中にどれぐらい伝わっているんだろう??


次は、シモンズ。

近年では国内外の最高級ホテルに相次いで御採用いただき、当社製品への信頼がさらに高まっております。

当社は今後も引き続き優秀な製品を提供し、顧客である皆さまにより快適な眠りとやすらぎをお届けできるサービスを目指して参ります。
http://www.simmons.co.jp/profile/message.html

こちらは最高級ホテルで使われていることを信頼のベースにおいている様で
ホテルでの導入実績を掲載しています。
http://www.simmons.co.jp/hotel_life/index.html
この辺りは介護がベースにあるパラマウントベットや、フランスベットとはウェブサイトのイメージからしても違います。
パラマウントベッド

フランスベッド

シモンズ

webデザインに関しては詳しくないのであまり突っ込めないです。


そして、最後にテンピュール

原点である"眠り"を考え、微妙に違うひとり一人の"ここちよさ"にこだわり、常に進化することに挑んできたテンピュールは、世界で認められる"グローバルスタンダード"へと大きな飛躍を果たしました。世界70ヶ国以上で販売され、"世界の安眠ブランド"として高い評価と信頼を獲得しています。

"一度味わうと手放せなくなるここちよさ"。

テンピュールの商品は、よくこんな言葉で評価していただきます。
テンピュールを選ぶ」ということは、心と身体が満たされた眠りを手にするということ。本物を求める人たちにこそ選んでほしい、テンピュールです。
http://www.tempur-japan.co.jp/about/whats-tempur.html

こちらは実績として、NASAプロ野球チームなどを挙げていてこれはこれですごいブランディングだなぁと思ったりします。
「本物を求める人たちにこそ選んでほしい」というのが嘘ではないことがよくわかります。


といった感じで、各社睡眠のためのいい商品を作るというのは当たり前なのですが消費者へのアプローチは様々。
パラマウントベッドの新しいブランドの戦略と被りそうなところは今のところなさそうな感じです。

■そもそも、iPhoneアプリでシェアを取れるのか?

睡眠に関わる要素をコンサルティングしていくときに必要となるのは睡眠データなわけで、
そうなるとiPhoneアプリ上でトップのシェア取っていかないと厳しい気がします。
現在、App Storeで「sleep」という単語で検索するとこんな感じになります。

ここ数日、「Sleep Cycle alarm clock」というアプリが有料アプリの1位を突っ走っていてかなりバカ売れしている状況です。
(今日見たら2位に下がっていましたが)
評価もかなりよくて星4つ。iPhoneアプリで星4つはほぼパーフェクトに近い数値だと思います。


ちなみに、「スマート スリープ」は無料アプリの40位。
評価も星2.5個とかなり苦しい状況です。
苦情の多くが音量問題なのでこれが解決されると評価は上がる気がします。
ただ、2010年1月以降は350円とかなり高い値段でのリリースとなるらしく、
無料の間でどこまで普及させることができるかが勝負のカギになりそうです。

パラマウントベッドはこの戦略で勝者となることができるのか

結局、ここからはブランドイメージの話になってしまうのかなぁと思います。
もし、iPhoneアプリでかなりのシェアを取って多くの人の睡眠データを集めることが出来たとして、
果たしてパラマウントベッドの一ブランドに対してコンサルティングしてもらいたいか?という話になると思います。


介護のイメージが強いので、その会社に「睡眠」に関する相談をして最適な答えが返ってくるのか?
僕にはそういう疑問がふつふつと湧いてきます。
それよりはテンピュールとかのほうがいいなぁと思ったりします。
逆にパラマウントベッド色が限りなく薄くて、睡眠に特化した新しい会社ですとかのほうが相談したくなるような。
ポジショニング信仰者としてはそんな考えに至ってしまいます。


イデア自体はすごくいいと思うし、むしろいい寝具でぐっすり眠りたいと思うけれど、
それでも何回も買い替えられるものではないからちゃんとしたところで相談したい。
そんな普通な悩みで最後は敬遠されてしまう気がします。


ここまで書いたのにこんな結論でなんだかなですが、こんなところで。