『魔術から科学へ』パオロ・ロッシ(みすず書房)

魔術から科学へ (みすずライブラリー)

魔術から科学へ (みすずライブラリー)

図書館。シェイクスピアの中の人ではないか?…などと、本来のお仕事とは関係ないところで有名な16〜17世紀英国の哲学者フランシス・ベーコン*1に関する研究書。彼個人の伝記的研究…というより、近代哲学における彼の哲学の存在を再評価したもの。ベーコン思想の源泉を古代の哲学(古典)と中・近世の秘教哲学(魔術*2)に求めながら、それらを批判的に継承、乗り越えることにより、近代合理主義(科学)への道をひらいたと評価する。


日本におけるフランシス・ベーコンの扱いは、いまだに哲学史の一頁…という感じでお寒い限りだが、こういう本を読むと、いかにも凄いヒトのように思えてくる。な〜んか影響されやすいなあ。でも、現在あたりまえ…と思われている物事の考え方が、(その時代の文脈からすれば)いかに革新的であったかということを知ることは、目からウロコって感じですね。


個人的にはベーコンその人についても、いろいろ知りたかったなあ(この本にそれを求めるのは筋違いですけど)。『随筆集』や、オーブリー*3の「ベイコン」伝(『名士小伝』所収)を読んだことがあるんで、人間的にも興味があります。こういう狭間のヒトってすんごく興味あるんですよね。

*1:ベーコン本人の伝記的事項については、Wiki(英語版)が詳しい。

*2:タイトルにある「魔術」とは、「迷信」的なもの(俗に言う「黒魔術」)ではなく、ルネサンス期に流行したヘルメス思想、錬金術などの秘教哲学(俗に言う「白魔術」)のことである。

*3:ジョン・オーブリーJohn Aubrey。英国の文人、好古家。